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第596回 アンコールワット建立と中国の大躍進 直井謙二

第596回 アンコールワット建立と中国の大躍進 直井謙二

第596回 アンコールワット建立と中国の大躍進

アンコール遺跡の研究と修復を続ける上智大学の石澤良昭元学長から年賀状を頂いた。カンボジアのシェムリアップにある上智大学人材養成研究センターが設立されて25年たった機会にフランス、オーストラリア、カンボジアそれに日本の4カ国の研究者が共同で「水利都市とアンコールワットの建設」を検証した。

その結果、アンコール王朝はバライと呼ばれる広大な貯水池を建設すると同時に二毛作が行われていたことが分かった。上智大学が取り組むアンコールワットの西参道の修復工事は7年目を迎え順調に進んでいるという。その功績をたたえ、王立プノンペン大学がフン・セン首相と共に石澤教授に名誉博士号を授与した。

巨大なアンコールワットの建設にはクメール人の英知が凝縮されている。現在はタイ領にあるピーマイ遺跡が試験的に建設した小型のアンコール遺跡だという説がある。(写真)規模は小さいが形はアンコールワットとそっくりだ。

ピーマイ遺跡は11世紀から12世紀にかけてスーリヤバルマン1世の手で建設され、その直後スーリヤバルマン2世がアンコールワットの建設に取り掛かり12世紀末に完成した。
ピーマイ遺跡建設で得たデーターをもとにアンコールワットの建設に必要な労働者の数を割り出し、シェムリアップ川やバライなどの灌漑設備を建設したと考えられている。シェムリアップ川は今も農業に使われている。さらにコメの二期作の技術など壮大な寺院の建設を前に周到な準備をしていたと思われる。

一方、現代の中国共産党の毛沢東主席の大躍進はどうだったのであろうか。欧米に追い付き追い越せと労働力を拡大するためコメの増産を目指した大躍進は、農法を無視し苗の植え付けを無理に増やし苗が育たず結果的に減作になった。

愛知県立大学の樋泉克夫名誉教授によると、実ったコメをスズメが食べつくすと駆除を命じ、国民はこぞってスズメを捕獲した。結果的にスズメが激減し、スズメが好む害虫が逆に増殖することになり、生産はさらに低下したという。その思いつきの増産計画で3000万人ともいわれる国民が餓死したともいわれている。地域を限定し苗を密に植えるなど、さまざまな方法を用いスズメを駆除する実験は行わなかったのか。

フランスの探検家アンリームオがアンコールワットを発見した時、その壮大さを地球上にこれ以上の建築物はないと語った。歴史に残る大寺院建設のためのコメ増産と欧米に追い付くためのコメの増産。その結果は正反対であった。


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