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第3回 たくさんの移民を受け入れること 楠山研

第3回 たくさんの移民を受け入れること 楠山研

第3回 たくさんの移民を受け入れること

息子が半年通ったLA郊外の小学校には、その地域の状況を反映して、ヒスパニック系、中国系(広東系が多め)、ベトナム系の子どもたちが多く通っていました。そのため、学校から保護者へのお便りはほぼ全てが英語・スペイン語・中国語(繁体字)の3言語併記でした。保護者会にも参加してみましたが、校長先生の話など会自体は英語で進められますが、スペイン語・中国語のグループには通訳がついて話を聞いていました。

(写真1)

(写真2)

そんな多様な子どもたちは小学校でアメリカ社会を身をもって学んでいきます。朝は全員で忠誠の誓い(Pledge of Allegiance)を唱えます。クラスの目標が教室の目立つ場所に貼ってあるのは日本と同じですが、その目標の下には、クラスの子どもたち全員のサインがついています。この目標を守るということを契約しているわけです。年度初めに配布される図書室の利用ルール説明書にも、保護者だけでなく子どももサインをして、先生に提出するようになっていました。日本ではよく、褒めるときはポイントを与え、良くない行動の時には減点するといった方法をグループ単位でおこないますが、アメリカではすべて「個人戦」でした。また係活動も、日本のようにグループで担うことはなく、個人がそれぞれの係を担当していました。

宿題の内容や量は学年や先生によってずいぶん違うのですが、どの学年でも毎日必ずあるのが読書の宿題でした。新年度の学校便りの校長先生のあいさつのタイトルは「Read, Read, Read!」。移民が多い地域ということもあるのでしょうが、まずは英語力、そのために読書でとにかく読解力を身に着けさせることを推進していました。読書の宿題自体は、毎日読んだ本のページと簡単な感想を書いて提出するものでした。近隣の図書館では、なんとか子どもたちを呼び込もうと、映画鑑賞会、工作会、ドジャース戦観戦イベントなど、さまざまな楽しそうな企画が毎日のように実施されていました。

息子の宿題は、2学年ともかなり多かった印象があります。子どもは2時半に下校し、おやつを食べてから、特に何もない日はすぐに宿題にとりかかるのですが、英語だからと親も手伝いながら進めて、気づいたら外は真っ暗、ということもありました。算数の簡単な文章題1問でも、回答欄がB5用紙1枚分あるなど、小学校低学年でも論理的に文章を書かせることを重視しているように感じました。

そんな若干多めの宿題ですが、金曜日には出されることはありませんでした。週末は家族としっかり遊ぶように、というメッセージでしょうか。子どもよりも親の方が喜んでいたかもしれません。その代わり、金曜日にはその週の個人評価用紙を持ち帰ってきます。宿題をしっかりしたか、お互いを尊重したか、役割を果たしたか、といった内容について、担任の先生が4段階で評価している、その週の通知表といえるでしょうか。なお金曜日と同様に、長期休みにも宿題はありませんでした。

知り合いの先生のつてで授業を見せていただいたハイスクールは、中南米からの移民の多い地域にありました。まだ英語力に不安のある高校生たちが、ディベートの授業を受けていました。テーマは、「クラッカーの上にチーズとハムのどちらを上にしてレンジに入れるか」。2チームに分かれ、どちらが説得力のある説明をできるかを競います。上にチーズがあると、嚙んだ時に歯にくっついて食べにくいが、上にハムがあれば食べやすい、というように、アメリカで生きていくために必要となる、正しい英語で、論理的に物事を説明する力を身に着けていきます。

多様な子どもたちを受け入れる先生の方でも、さまざまな勉強や準備をしています。私が所属した大学の教育学部には、教員免許を取得するため授業として、「移民の子どもに英語を教える授業」がありました。毎週1回、午後の時間に多くの子どもたちが保護者と一緒に大学にやってきます。教育学部学生2名、子どもたち2~3名といった小さなグループに分かれ、それぞれの子どもたちの英語力や年齢・個性を見極めながら、お絵かきや遊び、音楽を交えつつ、楽しく英語を教える経験を積んでいきます。

こうした移民の子どもたちを助けるため補助的に始まり、その後移民以外の人々にもブームとなったのがバイリンガル教育です。情勢により推進されたり、そうでなかったりする時期があり、現在、移民の子どものフォローのために行うバイリンガル教育は若干下火になっていますが、移民以外の保護者にも支持されるような才能開発といった意味でのバイリンガル教育の人気は根強く、中国語やスペイン語のほか、日本語を導入する公立学校もあります。息子が通っていた小学校はその翌年から英語・中国語のバイリンガル教育を実施するべく、準備を進めていました。

(写真3)

また、私は海外の日本人学校や補習授業校等の日本の在外教育施設での教育にも関心をもっています。中国系の子どもたちも日本の子どもたちも、現地で暮らし、英語と格闘しながら、同時に中国や日本の教育も受けています。子どもたちは金曜日に宿題がないことの恩恵をほとんど受けることなく、土曜日にさらに一日学校に通い、平日に負けない量の宿題をもらって帰ってきます。そうした生活を送る子どもたち、そしてそれを支える先生方や保護者のみなさんの尽力に、いつも頭が下がる思いです。

(写真1)3言語で表記される校長先生と保護者のティータイムのお知らせ
(写真2)毎日全員で「忠誠の誓い」
(写真3)ユニバーサルスタジオツアーの外国語レーンはスペイン語と中国語がメイン

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