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第26回 警戒心が磨かれる国、フィリピン 直井謙二

第26回 警戒心が磨かれる国、フィリピン 直井謙二

第26回 警戒心が磨かれる国、フィリピン

フィリピンで長期にわたって生活していると、警戒心が磨かれる。

外国からの輸入食品の問題があるとはいえ、日本での食事に緊張感はない。最初は日本の習慣が抜けずに無頓着に食べ、食あたりの洗礼を受けているうちに独特の警戒感が身につく。口の中に入れてもすぐにはのみ込まず、口の中で様子を見ておかしいと直感が働いたら、周りを気にせず、吐き出す。

おかげで10年以上の東南アジアの生活で食あたりは一桁の件数で済んだ。写真はフィリピンの首都マニラの郊外を走る路線バスだ。

思わず「青山台」に行こうと乗ってしまったら、どこへ行くか分からない。日本の中古バスを購入し、表示をそのまま使っている。消せば良いのにと思うが、「これは偽物ではなく、確かに日本製です」という鑑定書の代わりになるらしい。

見にくいが、自動ドアの文字が鏡文字になっている。フィリピンでは人は左、車は右で日本とは逆になっている。そこでドアの装置を切り取り、そのまま反対側に取り付けたため、ドアの裏表が反対になってしまった。

ビジネスの世界でも警戒心は欠かせない。

失業率が日本よりはるかに高いフィリピンで従業員を雇用しようと、新聞広告を出したら、朝から受験生に追われ、仕事にならなかった。そして、かなりの確率で偽の卒業証書が含まれている。採用の前に必ず大学に卒業証書の確認を取らなければならない。偽物の証書を売る店が堂々と看板を掲げている。偽物なのに、有名大学ほど値段が高いのが不思議だ。

警察の証明書や身分証明書も当てにはならない。

車の修理を出したら、運転手に修理工場から離れないように指示する必要がある。新しい部品を抜き取られ、修理中の別の車に取り付けられる心配がある。1個所の故障で出した車が修理から帰ったら、3個所故障したということもある。

振り込め詐欺が社会的な問題になっているが、20年以上も前に似たような詐欺に引っ掛かりそうになった。運良く寸前で見破った。巧みに詐欺をかわした自慢話をフィリピン駐在が長いある日本人に自慢したら、「それは初歩の詐欺だ。もっともっと巧妙な手口がある。フィリピンでは常に警戒心を持たなければ危ない」と教えられた。

その日本人が何千万円もの詐欺を働いて姿を消したといううわさを聞いたのは数年後のことだ。

「旧日本兵が見つかった」「山下財宝の在りかが分かった」「ガレオン貿易の沈船が引き上げられた」ー。今日もさまざまな話が飛び交っていることだろう。


写真1:マニラ郊外を走る中古路線バス


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