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第620回 記者会ゴルフと緊急ニュース(下) 直井謙二

第620回 記者会ゴルフと緊急ニュース(下) 直井謙二

記者会ゴルフと緊急ニュース(下)

2019年の9月をもってポケベルサービスが終了した。顧客が1,500人まで減ってはやむを得ない。今やスマホが主流となっている。80年代の緊急連絡はポケベル全盛時代だった。常時所持しているホケベルが鳴るとグループから離れ、クラブハウスの電話を借りて電話料金着払いで東京のデスクにかける。緊急ニュースのケースはまれで、明日でもよい要件が多かった。

「急いでいるわけではないが、例のトピックス企画の素材はいつ送ってくるか」と言われると、急いでいないならポケベル鳴らさなければいいのにと愚痴もでる。コースに戻っても調子が戻らず、結局中途半端なラウンドになってしまう。やがて通信手段が発達し、90年代は携帯電話が主流になった。携帯電話はすぐに要件が分かるから便利だった。

バンカーに阻まれ何度打っても出ないという悪戦苦闘の最中に携帯電話が鳴った。(写真)
「忙しいところすみません。送ってもらった暇ネタ素材でいくつか質問があります」との問い合わせだった。思わず「今大変な状況だから後にしてくれないか」と言いそうになる。

第620回 直井先生.jpg

携帯電話が鳴ると一緒に回っていた同業他社の記者も耳を澄ませる。大事件が発生し、出遅れれば抜かれる心配があるからだ。すると間もなく一緒にいた記者全員の電話が鳴り、即刻ゴルフを中止して競って取材現場に向かう場合もあった。

同業他社同士のゴルフはお互い様で中止することに躊躇しないが、異業種の人と回っていると迷惑をかけ戸惑いを感じることがある。大手航空会社のバンコク支店長が任期を終えて東京に戻ることになった。事件で捕まった犯人を日本に護送した際の機内撮影や緊急の航空券購入でお世話になった支店長の送別ゴルフ会だ。挨拶を交わし、ラウンドが始まった。筆者の番になったのでボールを置いて打とうとした瞬間に携帯電話が鳴った。頭を下げ順番を変わってもらい電話に出た。

「フィリピンのマニラが騒乱状態です。反エスラーダ大統領派のデモです。マニラに行ってください」と東京のデスクの声は焦っている。「マニラ支局長はどうした」と問い返すと「取材に出ています。人が足りません」との返答だ。航空会社の支店長や集まった仲間に何度も頭を下げ、キャディさんには倍のチップを払い香港経由で夕方にはマニラについた。

このグループとは定年退職後も毎年バンコクゴルフを楽しんでいる。ゴルフをやめてマニラに駆け付けた思い出のホールに立つと今でも「ほらほら、また携帯が鳴るよ」とひやかされ冒頭から「OB」になる。

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
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