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雲南省昆明-ビエンチャン間の国際鉄道が年末に開通-ASEANへ中国影響力強まるか(上) 日暮高則

雲南省昆明-ビエンチャン間の国際鉄道が年末に開通-ASEANへ中国影響力強まるか(上) 日暮高則

雲南省昆明-ビエンチャン間の国際鉄道が年末に開通-ASEANへ中国影響力強まるか(上)

中国雲南省の省都昆明とラオスの首都ビエンチャンを結ぶ高速の「中国-ラオス鉄道(中老鉄路)が12月初め、全線開通し、営業運転を始めた。ビエンチャンから昆明まで10時間ほど、同省南端シーサンバンナ(西双版納)の国境の町磨憨(モーハン)までなら3時間半で到達できる。中国当局はこの路線ばかりでなく、地続きのASEAN諸国を連結させる「汎アジア鉄道」網の構築を目指し、将来的にはタイのバンコク、さらにはマレー半島を縦断してクアラルンプール、シンガポールまで至る直通高速列車を構想している。このプロジェクトと歩調を合わせ、シンガポールとマレーシア両国は両首都間の高速鉄道建設に動き出した。香港の中国系週刊誌「亜州週刊」は汎アジア鉄道について「東南アジア人民の夢である」と各国が熱望していたように書いたが、この鉄道の完成を強く望んだのはむしろ中国側ではないか。ASEAN諸国をより強固に自国の経済圏に組み込むことができるからだ。米欧など西側は中国のASEAN影響力強化への懸念を強めている。

 

<中国-ラオス鉄道の開通>

昆明とビエンチャン間の距離は1035キロ。中国側のルートは昆明から南下して玉渓市、茶の産地として有名な普洱市を通り、シーサンバンナの景洪市、国境の町磨憨に至る。ラオス側(約420キロ)は国境近くのボーテンからほぼまっすぐ南に下り、世界遺産都市ルアンプラバンなどを通ってタイ国境近くの首都ビエンチャンに達する。国境近くは山岳地帯であるためトンネルの数は75カ所(総延長約198キロ)、橋は167カ所(同約62キロ)と多く、難工事が強いられた。特に全長9・5キロに及ぶ景洪市の景寨トンネルは地質的に軟弱地盤であるため、出水に悩まされた。このトンネル建設には4年の歳月が費やされ、昨年6月5日にようやく貫通した。

中国-ラオス鉄道も含む汎アジア鉄道網の構築はもともと国連のアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)が提唱してきたもので、欧州、中東とアジアを鉄道で隅々まで結び、ユーラシア大陸横断の物流を促進することを狙いとしている。中国からベトナム、ミャンマーに乗り入れる路線、さらにはベトナム、カンボジア、タイ3国の紐帯としての高速列車の路線も計画されている。これは、ASEAN諸国相互を結びつけるばかりでなく、中国にとっては東南アジアで巨大経済圏構想「一帯一路」を推進する上でも願ってもないネットワークの構築である。中でも国内の都市からマレー半島を縦断してシンガポールに至る路線を“幹線”と考え、その一環として、隣国で経済影響力が発揮しやすいラオスとの連結を最初に目指したようだ。

12月3日、開通式典が昆明駅とビエンチャン駅で別個に実施され、両国の政府首脳、幹部が多数参加し、期待感の高さが示された。両駅会場と両首都がオンラインで結ばれ、習近平、トンルン・シースリット両国家主席も画面に登場。習主席は「一帯一路共同建設の質の高い象徴的プロジェクトだ。パートナーシップを加速させ、人類運命共同体の構築を推進していきたい」と祝賀を表した。また、シースリット主席も「これは、一帯一路構想によって深く結びついた絆であり、ウィンウィンを実現させた。両国の運命共同体としての関係性を象徴したものである」と喜びを示した。双方が強調するキーワードは「一帯一路」であり、「運命共同体」であった。

中国-ラオス鉄道には現在、最高時速160キロの旅客列車、同120キロの貨物列車が投入され、一日往復18本(旅客が4本、貨物が14本)のダイヤが組まれている。駅数は33カ所、旅客駅に限ると計11カ所。ラオス公共事業運輸省と中国国家鉄路局との協定により旅客列車では国境での乗務員交代がなく、両都市を出た列車はそのまま相手国に乗り入れる。貨物列車は、越境で機関車と乗務員は相手国側と交代するという。それでも外国への大量の貨物輸送はメコン川に頼るしかなかった内陸国ラオスにとっては大きなプラスとなる。ラオス側はカリウム塩、天然ゴム、農産物の輸出増加が見込めるし、中国側はビジネスマン、観光客を大量にラオスに送り込んで一層同国経済に食い込めるほか、ビエンチャンからさらにタイ、カンボジアへの発展ルートとしても期待できる。すでにラオスとの貿易は人民元を使っているが、将来的にはASEAN全体に人民元決済に持ち込みたい願望もあるようだ。

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