1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第297回 来日したベトナム人親子との交流 伊藤努

記事・コラム一覧

第297回 来日したベトナム人親子との交流 伊藤努

第297回 来日したベトナム人親子との交流 伊藤努

第297回 来日したベトナム人親子との交流

最近、日本を訪れたベトナム人親子と連日、食事を共にする機会があった。ベトナム南部の商都ホーチミン市(旧サイゴン)で暮らす母親のガーさんと一人息子のドク君の二人だ。

今回の来日の目的は二つあって、一つは筆者が勤務する会社とガーさんが幹部の日系現地法人の共同事業の一環としての企業研修で、勤務先が事業パートナーである二人を招待し、東京・東銀座にある本社の関係部門を視察してもらった。しかし、それは表向きの理由であって、本当の狙いは懇談や歓迎の懇親会の場などを通じて、日頃の事業協力に対する心からの感謝の意を伝えると同時に、互いの理解や意思疎通を深めることだった。その点では、本社の最上階にあるレストランで開いた内輪の歓迎会に会社の編集、業務両部門の関係者が参加したのに加えて、このベトナム人親子をホーチミン市でよく知る何人かの日本の友人、知人を招いたことは大変良いアイデアだった。

懇親の場と言っても、遠路はるばる来日した外国の客人にとって、初対面の人たちが多ければ、なかなか打ち解けた会話もできないだろう。というわけで、日本側招待者として、ジェトロのホーチミン事務所駐在員を長く務めたN氏ご夫妻にも来ていただいた。ベトナム人のガーさんはもともとは音楽家で、プロのチェロ奏者だ。筆者の会社の事業のお手伝いに加え、音楽大学でも学生にチェロを教えている。N氏の夫人はホーチミンに住んでいた時期にガーさんからチェロを習っており、日本での久々の再会はこの上ない喜びであるかのように、二人は長い間、抱き合っていた。外国からの客人にこれほど心強い招待者はいまい。

日本での「研修プログラム」の一端を紹介したが、こうした演出で研修が上首尾に終わったのは言うまでもない。

さて、もう一つの来日の目的が、母親とともに日系現地法人の社員である25歳になる息子のドク君の日本語学習の段取りをつけることだった。ドク君はベトナムにある外国資本の有名大学をすでに卒業し、英語が堪能な上に、日本語も会話については中級程度の力があり、今回は読み書きを中心とした日本語の学習を今後どう進めるかを日本語学校と話し合ったというわけである。

全く偶然の展開となったが、ドク君は一般財団法人「霞山会」が運営する中国人ら外国人向け日本語学校「東亜学院」の担当教師の下で日本語を習得していくことが決まった。日本にとどまるわけではないので、自宅のあるホーチミン市で地道に日本語学習テキストを自習し、数か月に1度の割合でインターネットを使って学習の進み具合をチェックするテストを受ける。日本の小学1年生が最初に覚える「山」「川」といった漢字300字程度の読み書きが最初の目標だ。

すでに普通の会話では十分に意思疎通ができるドク君の「話す」「聞く」の能力は、担当する「東亜学院」の教師も太鼓判を押していたので、ハードルはそれほど高くないはずだ。打ち合わせの場に居合わせた筆者は、持ってきた日本の全国紙朝刊をドク君に手渡し、「中学卒業のレベルでこの新聞が読めるようになるから」と言って励ました。日本語学習があるレベルに達したら、文章の書き方をドク君に教えてあげたい。

《アジアの今昔・未来 伊藤努》前回  
《アジアの今昔・未来 伊藤努》次回
《アジアの今昔・未来 伊藤努》の記事一覧

タグ

全部見る