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第259回 受験英語を土台に会話・討論の訓練を(その2) 伊藤努

第259回 受験英語を土台に会話・討論の訓練を(その2) 伊藤努

第259回 受験英語を土台に会話・討論の訓練を(その2

外国語(英語)学習・習得に関する持論紹介の2回目は、高校から大学にかけての勉強法である。日本では大学受験でのウエートが高いこともあって、高校時代にはかなりの時間を割いて英語を学び、また、受験勉強でも英語の学習には力を入れざるを得なくなっている。

これまではどちらかと言えば、長い文章の読解力や難しい(重箱の隅をつつくような?)文法の理解、日本語から英語に訳す英作文が受験英語の3点セットとなっていたが、入試英語にもっと、ヒアリングや会話の要素を取り入れた問題を出すようにすれば、高校での英語学習も「聞く・話す」に力を入れていくようになるだろう。日本語能力がまだ十分に付いていない小学生に英語を習わせるよりも、この方法導入の方がよほど効果が大きいはずだ。

また、中学、高校の英語の授業が英語で行われるようになれば、生徒の会話能力も飛躍的にアップするに違いない。要は、英語学習の目的が外国や国際社会、あるいは異文化に接するための有力な道具(ツール)であることをわきまえ、そのためには英語の文章を読み、理解する読解力もさることながら、外国人と普通に話したり、議論することも重要なことを知る必要がある。ただし、議論も行うということは、あいさつ程度の英語ではだめで、自分が考えていることを英語で話す、主張するという別の訓練が必要になってくる。これは、英語の能力だけでなく、さまざまな出来事に日ごろから関心を持ち、自分の意見も言えるようにするという習慣を心掛ければ、自然に身に付いていく。小学生のころから、短時間でもいいので新聞などを毎日読む習慣をつければ、日本や世界の出来事などに関する知識は格段に増える。

日本の大学入試では相当高度でかつ分量のある英文を読ませるので、受験英語である程度の得点を上げることができれば、後は本人の努力次第で英語の能力はどんどん高まっていくはずだ。前回の拙稿でも書いたように、日本では学校で英語を長年学びながら、満足に話すこともできないという悪弊は、英語学習が高校入試や大学入試を突破することが最大の目的になってしまっていることで、入学後はそこで蓄えた英語能力をさらに伸ばしていくことに欠けている点にあると筆者は考えている。長年の体験や見聞からの実感に基づく結論である。

狭い範囲の経験かもしれないが、筆者が勤務先で長く所属していた部署は国際ニュースを扱うセクションだったこともあって、英語やその他の外国語(中国語、ロシア語、ドイツ語、フランス語などなど)ができる先輩、後輩が多かった。彼らは、英語で続々と入ってくる外国通信社の記事を上手に翻訳して日本語の記事にするだけでなく、話す・聞く方の能力の持ち主も少なからずいた。理由は簡単で、留学経験者あるいは日本の大学でもESS(英会話クラブ)や英語弁論部などのサークルに所属して、英語を道具のように使う経験を積んだ者たちだったからだ。


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