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第141回 四川省綿陽の森のホテル 伊藤努

第141回 四川省綿陽の森のホテル 伊藤努

第141回 四川省綿陽の森のホテル

前回は今年7月に中国四川省の大震災跡地を視察した際に立ち寄った省都・成都に隣接する綿陽市のことを取り上げたが、今回は、一泊した綿陽市のホテルを紹介したい。このホテルは、人口が500万を超える大都市の綿陽中心部から小型バスで15分程度にある綿陽富樂山九洲国際酒店で、小高い山の中腹に建物や庭、プールなどの施設が点在する、文字通り自然や森林を最大限生かした造りとなっている。パソコンの検索で、ホテル名を打ち込めばホームページ(HP)の画面となるので、興味のある方はぜひアクセスしてみてください。

中国国内のホテルの格付けでは、5つ星、4つ星の二つの評価が出ていたが、中国の最高指導者だった江沢民前国家主席や温家宝首相らの要人が最高級のスイートルームに宿泊したことが記録されており、その意味ではホテルの格は高い。

筆者はこれまで、中国の首都北京や地方都市を訪問した際は中心部にある近代的なホテルにばかり宿泊してきたので、山懐に包まれた森の中のホテルにはたちまち魅せられてしまった。広大な敷地内の木々や草花は剪定がよく施され、さまざまな野鳥がさえずり、飛び交い、自然の楽園の趣があった。

到着したその晩は、地元の綿陽市対外友好協会が主催した宴会に招かれたが、宴も終わり、森の小道を歩いて自室に戻って室内を観察してみると、高級ホテルには珍しく、机には子供の勉強用の筆立てがあり、小さな物差しや三角定規、消しゴム、筆記具が置かれてあった。「なぜこのような物が…」と不思議に思ったが、翌朝、朝食のため大きな食堂に行くと、小中学生とおぼしき児童・生徒が幾つかのグループに分かれて宿泊していたことで合点がいった。この森のホテルは、富裕層の子弟のサマーキャンプのような形でも利用されていたのだ。

中国四川省綿陽にある「森の中のホテル」

ビュッフェ形式の朝食が終わると、子供たちは一斉に外に出て、日本のジャンケンと同じ遊びに興じていた。北京で特派員経験がある記者仲間に聞くと、中国のジャンケンは日本と全く同じルールとのことだった。ハサミのチョキが紙のパーに勝ち、パーが石のグーに勝ち、グーがチョキに勝つという極めて単純なルールである。

たった一泊の滞在だったが、中国にも自然を生かした滞在型のホテルがあり、野鳥の楽園、富裕層の子供にとって勉強部屋代わりのホテル、そしてジャンケンが日中両国で同じであることを知ったという記憶で、忘れ得ないホテルとなった。バードウオッチングが好きな日本人観光客にはぜひお勧めしたいホテルである。ネットで宿泊料金を調べると、高い格付けの割にはお得な料金だと感じた。

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