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第544回 タイの病院で始まった大麻メニュー 直井謙二

第544回 タイの病院で始まった大麻メニュー 直井謙二

第544回 タイの病院で始まった大麻メニュー

タイの東部プラチンブリ県の病院で大麻を使った料理がメニューに加わったというニュースが流れた。タイ政府は2020年12月、大麻を麻薬リストから外し許可を受ければ大麻を食材として使えるようになったという。すでにカナダなどは2018年10月から大麻の合法化に踏み切っている。

筆者が大麻に遭遇したのは30年ほど前だ。1992年カンボジアの内戦の収束を目指す総選挙が国連主導で行われた。日本からも自衛隊が初めてPKO活動を実施することから大きなニュースとなった。各国から記者が集まり国連主催の記者会見が毎日行われていた。会見場は急作りのプレハブにエアコンを取り付けただけの粗末なものだった。(写真)3月4月のカンボジアは猛暑の季節で窓を閉めエアコンをフル回転させなければならない。会見場は欧米の記者が吸う大麻の煙が、締め切った狭い会見場に立ち込め息苦しいほどだった。

カンボジアは各派入り乱れての選挙遊説中で国が機能していなかった。内戦終了となれば必要がなくなる銃がひそかに市場で売られていたくらいだ。乾燥大麻の束は中央市場でも売られていた。筆者は無論大麻を吸わないが、取材中に間接喫煙となり、会見が終わるとふらふらしながら支局に戻った。

その夜、10人ほどの同僚と屋台に繰り出した。昼間の猛暑も収まり夜風が気持ちいい。(写真)大通りに面した野外レストランを陣取り、ベトナム風の鍋を注文した。しばらくすると物乞いが集まってくる。地雷で足を失った元兵士、親のない子供などが黙って手を差し出す。
鍋をつつきながらビールでも飲もうという高揚感が吹き飛び、小銭を渡し黙りこむ。やがて店主が鍋を用意しやっと食事が始まった。

満足に食事をしていない物乞いに囲まれながらの食事はなかなか喉を通らないものだ。ところがしばらくすると雰囲気が徐々に陽気になってきた。食事が終わるまで待てと差し出された手を払いのける同僚もいる。どうも変だと思い店主を呼んで食材を聞いてみた。60歳ぐらいの親爺は「皆さん上機嫌ですね。大麻をうんとサービスしました」と言った。この時、大麻は食材にもなることを初めて知ったのだった。

こうした経験から大麻に対する警戒感が薄れ、日本に帰国してからも感覚が変わらず逮捕される人もいる。大麻をどう規制するか国際的な取り組みを望みたいところだ。大麻は無害と主張する向きもあるが頭痛や妙に高揚する点を考えると否定的な見方になる。タイ政府も過剰摂取を避けるため1人5枚までなど規制を設けている。

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