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第230回 東南アジアに学ぶゲリラ豪雨対策 直井謙二

第230回 東南アジアに学ぶゲリラ豪雨対策 直井謙二

第230回 東南アジアに学ぶゲリラ豪雨対策

ここ数年、地球温暖化の影響で日本の夏の気候が亜熱帯化している。局地的な豪雨が各地を襲い、がけ崩れや川の氾濫の重大な被害が続く。そして最近では日本でも雨柱を見る事が珍しくない。あまりにも狭い範囲で豪雨が起きるので、最新の設備を誇る日本の天気予報システムでも予想が難しい。結局、天気状況を知らせる観測員を何万人も全国に配置して各地点での報告を受け、予想を出すという原始的な人海戦術しかないようだ。

東南アジアでは長い雨季の間、毎日のようにゲリラ豪雨が襲う。写真はミャンマーとタイの国境付近で飛行機の中から撮影したものだ。2本の雨柱、晴れ、曇り、豪雨の地域がはっきりわかる。眼下の道路や民家と比較すると小さいほうの雨柱の直径は数百メートルであろう。そしてその雨柱はかなりの早さで移動する。

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ゴルフ天国の東南アジアでは日本人もよくゴルフコンペを開く。最初にフォールアウトしたパーティはまったく雨に当たらず、次のパーティは少し濡れ、最後のパーティはずぶ濡れになってクラブハウスに駆け込んでくることがある。わずか10分間で状況が一変するのだ。

こうした激しい天候の変化にさらされてきた東南アジアの人々は豪雨をやり過ごすコツを知っている。伝統的な高床式住居は最初から洪水を想定したものだ。床上浸水し後片付けに追われることもなく水が引くのを待てばいいだけだ。高度経済成長期に入り、女性の装いもファッショナブルになっているが靴下を履く人は少ない。あっという間の洪水も靴下を履いていなければ靴を脱ぎ、すぐ裸足になれる。傘を持つ人も少ない。風を伴った豪雨には傘はほとんど役に立たない。

一陣の風が吹き天気が怪しくなりかかるとまだ日が照っているうちから人々の動きが激しくなる。露天商はさっさと商品を片付け、通行人は走り出す。経験がないと何が起きたのかと戸惑う。人々が建物の中に逃げ込んだ直後、バケツをひっくり返したような豪雨がやってきた。

豪雨のあとも楽天的だ。バンコクの中心に日比谷公園の3倍ほどの面積を誇るルンピニ公園があるが、洪水のたびに公園の池から大きなコイが大通りに流れ出す。逃げたコイを狙ってビル街で投網を楽しむ人々の奇妙な光景を目にする。マニラの大統領府、マラカニアン宮殿もパシグ川の氾濫に見舞われる。大統領府の職員はボートを引きずり出し、ビルからビルへボートに乗って行き来するが、その顔からは笑顔が見られ悲惨さはない。ゲリラ豪雨に慣れていない日本人が学ぶべき知恵が東南アジアには多くある。


写真1:2本の雨柱

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
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