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第229回 餃子の古里を訪ねて 伊藤努

第229回 餃子の古里を訪ねて 伊藤努

第229回 餃子の古里を訪ねて

今年の夏もジャーナリスト訪中団の一員として、駆け足で中国を回ってきた。地方視察は西安で、唐の都だった長安が昔の名前である。1200年以上も前に、遣唐使がはるばるやって来た地でもあり、日本人にもなじみ深い中国の古都だ。

西安はまた、西域や遠く欧州とも交易を行ったシルクロード(絹の道)の中国の起点であり、国際交流の拠点でもあった。西安は現在、人口が800万人を抱える大都市に発展し、市内にはかつての城壁ととともに、現代的な高層ビルが林立しているが、陝西省対外友好協会の若い女性スタッフ、A嬢によると、市民の多くは唐代をはじめ、中国の多くの歴代王朝が都を置いていた西安の歴史や文化、慣習などに敬意を払い、そこに住むことに誇りを持っているとのことだった。

昔からの国際都市、西安は今なお、世界の多くの国の都市と姉妹関係を持っているが、日本とは奈良市、京都府、香川県と長い交流の歴史を有する。奈良、京都との姉妹都市関係は唐の時代からの長い交流を受けたものだが、香川県というのは、長安と関係が深い空海(弘法大師)の生誕の地であることと、特産のうどんが取り持つ縁とのことだった。

うどんとは意外だが、小麦が特産物の西安はうどんと、小麦粉が皮の食材となる餃子の料理で有名なのである。餃子は国土の広い中国の各地で食されている中国を代表する料理の一つだが、西安の餃子は中国人の間でもよく知られた名物料理だとA嬢は自慢げに教えてくれた。

第231回 伊藤努 保護センターのケージで飼われているトキ.jpg

金魚をかたどった西安の蒸餃子

西安の餃子が有名な地元料理となったのは、古都の地勢と気候など自然環境と密接に関わっている。広大な中国全土には時差がなく、その標準時が西安を基準にしていることからもうかがえるように、西安は中国のほぼ中央に位置し、その南部を国土を南北に分ける目安となる秦嶺山脈が東西に走っており、西安以北は小麦栽培圏、西安以南は稲作栽培圏となっているのだそうだ。そんな自然環境が農作物の特産である小麦、そしてそれを使った食材のうどん、餃子を生み出していったのだろう。

西安に着いたその日の夕食では、西安独特のズボンのベルト状の一枚(一本)のうどんをご馳走になり、翌日の昼食は西安で最も有名だという餃子専門店で各種の餃子料理を堪能した。餃子料理には、水餃子、蒸餃子、焼き餃子の3種類があるが、西安では蒸餃子が主流で、金魚やカエルをかたどった蒸餃子に続いて、具がくるみ、餡子(あんこ)という初めて体験する餃子もあった。

日本では昼食にラーメン・餃子、餃子定食を注文することが多く、焼き餃子とラーメン、白いご飯は相性がいいが、A嬢に聞くと、西安では餃子が主食とのことで、前記の餃子のセットメニューは日本人が独自に開発したメニューであることを知った。その意味でも、収穫の多い西安取材だった。

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