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第198回 イナゴは貴重な蛋白源 直井謙二

第198回 イナゴは貴重な蛋白源 直井謙二

第198回 イナゴは貴重な蛋白源

日本でも蜂の子やイナゴなどの昆虫類を食用にする習慣があるが、東南アジア、特にタイやカンボジアなどでは昆虫は貴重な蛋白源だ。

タイ東北部では各農家にトタンを漏斗のように丸め、誘蛾灯をつけた昆虫捕獲器が置かれている。(写真)夜間、誘蛾灯に集まる昆虫がトタンにぶつかって、下に置いてある水の入ったバケツに落ちるよう仕掛けられている。朝、バケツの中のまだ生きている昆虫を取り出し、ハーブなどと炒める。

第248回 直井.jpg

乾季の終わり頃、カンボジア国境に近い地域のプラチンブリ県などではタイの風物詩、イナゴ刈が始まる。イナゴは日本同様、稲などの穀類を食い荒らす害虫として駆除されてきた。80年代に入り農作物の値段が下がり、農家にとってはイナゴを収穫した方がむしろ収入が増えることがわかり、農薬散布を止めイナゴを積極的に集荷するようになって行った。

夕日が地平線に落ちる頃、100メートルのロープを持ち出し、20メートルくらいの間隔で農民が並んでロープを持ちトウモロコシ畑をゆっくりと夕日に向かって歩き出す。トウモロコシ畑に潜んでいたイナゴは驚いて一斉に、夕日に向かって飛び出して行く。追い込みの最後に農民は100メートルのロープで大きな円を作り出し、広大なトウモロコシ畑にイナゴの密集地を出現させる。農民は一旦引き上げ、夜になるのを待った。夜9時過ぎ、あたりが真っ暗になった頃大きなビニールシートや誘蛾灯それに棒をもって足を忍ばせ再びイナゴの密集地に近付く。イナゴの密集地の真ん中に巨大なビニールシートを敷き、静かに誘蛾灯を立てる。合図をとともに誘蛾灯が点灯され、農民は叫びながらあたり一帯を棒でたたく。驚いたイナゴは一斉に誘蛾灯の光に向かって飛び出し、誘蛾灯にぶつかってバラバラと下に落ちる。イナゴの山が出来たところでビニールシートを丸め、イナゴを一網打尽にする。

農家の軒先などでお年寄りが収穫したイナゴの羽をむしり、網の中に入れる。羽をむしられてもイナゴを生きていて、鮮度を保ったままバンコクを始め各都市に送られる。ほとんどのイナゴは屋台などで空揚げにされ、一袋20バーツ(日本円で60円)ほどで売られる。
食感は小エビのから揚げのような感じだ。

カンボジアではコウロギが名物だ。日本人はコウロギの鳴き声を聞くと秋を思い浮かべるが、カンボジア人は食欲の秋を感じているように見える。


写真1:誘蛾灯をつけた昆虫捕獲器

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