1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第530回 シンガポールのデング熱  直井謙二

記事・コラム一覧

第530回 シンガポールのデング熱  直井謙二

第530回 シンガポールのデング熱  直井謙二

第530回 シンガポールのデング熱

シンガポールはインドやバングラディシュからの出稼ぎ労働者の宿舎が3密になりコロナウィルスの蔓延が社会問題になっている。7月末現在で人口570万人に対し感染者は5万人を超えなお増え続けている。一方で社会構造上エッセンシャルな仕事を担う外国人労働者の存在は欠かすことができずシンガポールは苦慮している。

加えて最近蚊が媒介するデング熱が流行しているというニュースが注目されている。デング熱の感染者は7月末で2万2,000人を超え死者も25人を超えコロナウィルス感染者の死亡者とほぼ同数だとなっている。

シンガポールには国際会議の取材や買い出しで40回ほど訪ねたが、一度も蚊に刺された経験がない。80年代末にシンガポール支局からバンコク支局に異動してきた新聞社の記者はバンコクに到着するやいなや蚊に刺されて腫れたと嘆いていた。

シンガポールの現地記者によると政府は蚊の駆除に力を入れている。家庭でも空き缶などを放置し雨がたまっているだけで警告を受け、改まらなければ罰金が科せられると話していた。

街並みが美しいシンガポールは観光立国でもあり、東南アジアの中にあって欧米以上の清潔感を売り物にしている。街の中心にある名門のラッフルズホテルで休息しているときイギリス人の老夫婦と会話したことがある。老夫婦はロンドンから頻繁にシンガポールを訪ねている。最近のロンドンは不潔になり古き良きロンドンの面影はないがシンガポールには残っているという。

デング熱の流行でシンガポールのイメージが損なわれそうだ。蚊が媒介するデング熱の流行を食い止めるため当局は殺虫剤の散布と共に空き缶の放置など蚊の繁殖を見逃した家庭や事業所への罰則を強化したという。

デング熱の流行の原因はコロナウィルスの蔓延も一因となっている。シンガポールはロックダウンを余儀なくされ、建築途中のビル現場が放置された。穴だらけの現場に雨季の雨が降り注ぎ、水たまりができて蚊が大量に発生した。

1997年のアジア通貨危機を思い出した。タイのバーツ暴落で始まった通貨危機でバンコクなどの建築現場は軒並み工事が止まった。今回と同じように建築現場の穴に雨水がたまり、蚊が大量発生しデング熱が大流行した。

シンガポールは時々インドネシアからのヘイズ(煙害)にも悩まされる。インドネシアの泥炭が自然発火し風に乗って煙がシンガポールを襲い呼吸器系の疾患を起こす。新型コロナウイルス、デング熱そして煙害の3重苦になれば優れた医療を誇るシンガポールでも医療崩壊が懸念される。

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回  
《アジアの今昔・未来 直井謙二》次回
《アジアの今昔・未来 直井謙二》の記事一覧

 

タグ

全部見る