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第522回 引き上げられるか、33年前に撃墜された大韓航空機  直井謙二

第522回 引き上げられるか、33年前に撃墜された大韓航空機  直井謙二

第522回 引き上げられるか、33年前に撃墜された大韓航空機

1987年11月末、乗客乗員115名を乗せたバクダッド発の大韓航空機がアンダマン海上空で撃墜された事件は今でも鮮明に覚えている。当日、筆者はカンボジアでベトナム軍のカンボジアからの撤退を取材していた。通信事情の悪かったカンボジアでは大韓航空機が落ちたという以外の情報はなかった。

当時、国際的に制裁を受けていたカンボジアから支局のあるバンコクに戻るには一旦、ベトナムのハノイかホーチミンに出て改めて飛行便を捜しバンコクに戻るしかなかった。日本人は乗っていないし、バンコクに到着する頃にはニュースではなくなっているだろうと甘い予測をしていた。

ところが北朝鮮の関与が浮上して大ニュースとなった。墜落した場所もマレー半島付近でレーダーから機影が消えたことからアンダマン海か当時のビルマ政府と対峙するカレン族の支配地区か不明だった。地下活動を続けるカレン族の代表部と連絡を取り、首都マナプロウ(写真)で故ボーミヤ代表にインタビューしたことはすでに書いた(小欄第78回 金賢姫元工作員とカレン族)が、結局取材は空振りに終わった。

それから半月後、韓国で注目の大統領選が行われた。軍部が推す盧泰愚候補と民主勢力が推す金泳三候補それに金大中候補による激しい選挙戦が展開された。取材の応援でソウルに入ったが、選挙戦も終わり取材スタッフも十分だったことから投票日の前日の12月15日にバンコクに戻ることにした。金浦空港に到着すると異様な雰囲気が漂っていた。軍や警察が集まり、公共放送KBSの中継車も駐車している。当時は軍政が空港の取材を厳しく規制していたし、外国のメディアが許可なしで撮影することなど想像もつかなかった。

後日、大韓航空機を撃墜した金賢姫元死刑囚が逮捕され金浦空港に到着したことを知り悔しい思いをした。事件から2年3か月後、懇意にしていたフリーの故橋田伸介記者がタイの沖合で大韓航空機の破片を見つけた。タイの漁師に手間賃を渡し、金属の破片が網にかかったら連絡するように仕掛けたという。見事なスクープだ。大韓機がアンダマン海上で墜落したことが証明された。今年1月、韓国民放のMBCがアンダマンの海底で大韓機のもの推察される胴体部分を発見したと報じた。遺品や遺体の引き上げや証拠を求め韓国政府はミャンマー政府と引き上げに向け交渉中だという。33年前の撃墜事件の全容が明らかになり、遺体や遺品が回収されるだろうか。

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回  
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