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第82回 タイ・ランパン県のゾウ・センター 直井謙二

第82回 タイ・ランパン県のゾウ・センター 直井謙二

第82回 タイ・ランパン県のゾウ・センター

タイ北部の古都ランパンに年老いたゾウや傷ついたゾウを保護するゾウ・センターがある。開発とともに東南アジアの野生ゾウの数が激減しており、放置しておけば、数十年で絶滅するのではないかと懸念されている。

今年9月にもタイのターク県に近いミャンマー(ビルマ)で地雷を踏んで足を負傷した10歳になるゾウが搬送され、手当てを受けたが、感染症にもかかっており、すぐには手術ができない状態だった。ミャンマー軍事政権とタイ国境付近の少数民族は最近、戦闘が激しくなってきており、地雷は少数民族が仕掛けたものとみられている。

ミャンマーでは材木の切り出しに今でもゾウを使っているが、ゾウはミャンマー人の飼い主と母親ゾウとともに山に入り、地雷を踏んだという。ミャンマーにはゾウを治療する病院がないため、国境を越えてタイまで運ばれた。

一方、センターに収容されているのは、負傷したゾウばかりではない。日本を含め各地の動物園に贈られ、子供たちを楽しませた年老いたゾウがゆったりと老後を過ごしている。100頭近いゾウに毎日食事を与え、傷の手当てをするため、高額の経費がかかる。そこでセンターでは比較的元気なゾウに芸を仕込み、観光収入を稼いでいる。

訓練されたゾウは材木を並べたり、運んだりしたりする芸を見せていたが、次第に飽きられたため、最近では絵を描いたり、楽器の演奏をするなど芸術方面への能力を高めている。

第168回 直井.jpg

日本では故團伊玖磨さんの作曲した童謡「ゾウさん」が有名だが、タイにも誰もが知っている「ゾウさん」という童謡がある。太鼓などの打楽器や木琴などを使い、毎日、「ゾウさん」の演奏の練習に励んでいた。

練習を見学したが、日本人の筆者にはそれぞれのゾウが太鼓や木琴を勝手にたたいているようにしか聴こえなかった。だが、タイ人には「ゾウさん」に聴こえるらしい。

大きなキャンバスを前に自由な抽象画を描いているゾウもいる。どう見ても、丸を何個も重ねたとしか思えない絵だが、ニューヨークで開かれるクリスティーズ・オークションで十万円の高値で売れたことがあると言うから、筆者に芸術的センスがないのだろう。

ランパンのゾウ・センターではゾウ使いの訓練が行われ、日本の若い女性も参加していた。下手な乗り手は振り落とす荒馬がいるというが、ゾウは逆で、初心者の乗り手には前足を上げて、足掛かりをつくるばかりか、鼻でお尻を押して助けていた。

心やさしいゾウがいつまでも東南アジアに残ることを祈りたい。


写真:ゾウの行列

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
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