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第84回 東洋で一番の歴史を持つゴルフ場 直井謙二

第84回 東洋で一番の歴史を持つゴルフ場 直井謙二

第84回 東洋で一番の歴史を持つゴルフ場

ゴルフは羊飼いが羊を追う棒で小石を打ち、ウサギの穴に小石を入れる競争をしたことから始まったという話を聞いたことがある。ホールの大きさはウサギの巣の入り口の大きさだという。いずれにしてもイギリスが生んだスポーツで今や世界中で愛されている。

今年、全英オープンが開かれた由緒あるイギリスのセント・アンドリュース・ゴルフ場は1552年の設立だが、アジアで一番古いゴルフ場はイギリスの植民地だったスリランカ(旧セイロン)にあるヌワラ・エリア・ゴルフクラブで、1889年に開場した。コースは18ホール、6250ヤードとやや短い。(写真) ヌワラ・エリアが山岳部で、平地が狭い上にゴルフコースが町中にあるためだ。

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各ホールは良く整備されているが、イギリスのゴルフ場のようにラフは深く、上級者向きだ。クラブハウスは植民地時代を思わせるコロニアル風で、ハウスの中には歴代の優勝者の名前が刻まれたボードが飾られている。ボードによれば、開場と同時にキャプテン杯が争われ、10年後には年間最優秀賞が贈られている。

受賞者の名前を見ると、「シン」などスリランカ人と思われる名前も見られるが、ほとんどが「エリオット」や「アレキサンダー」などイギリス人の名前が占めている。

イギリスは19世紀、中国から大量のお茶を輸入し、大幅な貿易赤字に苦しんでいた。赤字解消には2つの方法があった。

1つはイギリスの植民地だったインドで生産したアヘンを中国で販売することだ。しかし、アヘンの弊害に悩む清朝はたびたびアヘンの禁輸政策を実施し、大量のアヘンを焼き払ったことからアヘン戦争が起きた。

もう1つの方法は中国国境に近いインドで自らお茶を栽培することだった。イギリスはお茶の生産を上げるため、栽培にふさわしいスリランカ山岳部のヌワラ・エリアでもお茶の栽培を始めた。

スリランカにはもともと、仏教徒のシンハラ人が多く住んでいたが、お茶の栽培の技術を持っていなかった。そこでイギリスは、インドの南部からヒンズー教徒のタミル人を多数入植させた。このため、スリランカは後に宗教対立で苦しむことになる。

プランテーションのオーナーのイギリス人がヌワラ・エリア・ゴルフクラブを開場させた。コースを回ってみると、気温は低く、山岳部で空気が乾いていてゴルフに最適の気候だし、コースコンディションも良好だ。スコアーが悪かった理由は貸しクラブだったせいにしておこう。


写真:ヌワラ・エリア・ゴルフ・クラブ

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
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