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第38回 タリバン兵士と眺めたY2K初日の出 直井謙二

第38回 タリバン兵士と眺めたY2K初日の出 直井謙二

第38回 タリバン兵士と眺めたY2K初日の出

アフガニスタン情勢が一向に改善されない。アメリカの世論はベトナム戦争の悪夢を思い出し、オバマ政権の追加増派に反対する意見が6割を超えた。

ベトナム戦争に敗れれば、ドミノゲームのように世界中が共産化されるというドミノ理論の下、50万人に及ぶ軍をベトナムに送ったが、一向に戦況は改善せず、5万人以上の戦死者を出し、アメリカ軍はベトナムからの撤退を余儀なくされた。しかし、世界中が共産化されることはなかった。

テロとの戦いも、敗れれば世界中にテロは蔓延するという大義で増派を続けているが、どこかドミノ理論と似ている。

2000年の1月1日にコンピューターが誤作動し、世界中が混乱すると騒がれていたことがある。当時、赴任していたバンコクでも官庁や日本企業が対策に頭を痛めていた。混乱に備え、大晦日は徹夜の取材態勢を取ることにした。

クリスマスイブの1月24日夜、インド機がハイジャックされ、乗客の中に日本人1人いることが分かった。ハイジャックしたイスラム過激派の要求で、ハイジャック機はパキスタンのラホールなどを経由してアフガニスタンのカンダハルに着陸、事件はこう着状態となった。

バンコクからイスラマバードに入った。当時のタリバン政権はパキスタンと外交関係を結んでいた。イスラマバードのタリバン政権の大使館でビザを取り、国連のチャーター機でカンダハルに向かった。

上空から見ると、茫漠たる砂漠にそびえる万年雪をかぶったヒンズークシュ山脈が美しかった。内戦でカンダハル空港の半分は破壊されていた。空港なのに、ハイジャックされたインド機以外の飛行機はほとんど見当たらない。

第72回 直井.jpg

タリバン政権のムタワキル外相を中心にイスラム過激派との人質解放交渉が行われたが、なかなか解決しない。突然、取材に飛び出したため、放送機材以外は持ってこなかった。破壊された空港には食堂もない。タリバン兵が差し入れてくれたナンを食べ、ダウンジャケットを着込んでコンクリートの上でごろ寝した。

隣で眠るタリバン兵のカラシニコフ銃が気になり、なかなか眠れない。事件は大晦日の夜8時に解決した。人質は日本人を含め全員無事解放され、ハイジャック犯はタリバン政権が用意した車で逃走した。

夜が明け、滑走路にとまるハイジャック機の上に登った黄色い初日の出をタリバン兵と眺めた。バンコクのコンピューターのことは頭から消えていた。

日本の外務省高官によれば、最近のアフガン情勢の悪化でカンダハルはタリバン勢力が浸透し、日本人は入れないという。

写真:カンダハル空港のハイジャックされたインド機

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