第34回 タイの宝くじ 直井謙二
第34回 タイの宝くじ
年末ジャンボ宝くじの季節がやってきた。ほとんどの人にとって宝くじはお金をもたらすものではなく、「夢」を運んでくるものだ。夢を求めて宝くじ売り場に長い列ができる。タイでも宝くじは庶民に夢を運んでくる。
タイの宝くじは月に2回ある。当選発表は月半ばの15日と月末だ。宝くじ売り場の風景は日本とかなり異なる。
日本は連番で20枚、バラで20枚などと買い方が単純だから、売り場の回転は早い。一方、タイでは客同士が情報交換をしながら、慎重に番号を選ぶ。
求める番号がなければ、次の店に行く。当選番号は決まっていて、「その番号を見抜けば必ず当たる」と信じているタイ人が多い。
タイでは宝くじの専門雑誌があり、当選番号の見抜き方を伝授する。中には袋閉じになっていて、ずばり当選番号が書かれている雑誌もある。
仏教国タイでは高僧は尊敬の的だ。バンコクのお寺の高僧の仕草に当選番号のヒントが隠されているといううわさが立ったことがある。人々が寺に押し掛けた。高僧は「寺というのは神聖な場所、金儲けのために来るところではない」と人々をいさめ、両手を開いて突き出し、寺に入ることを拒否した。すると人々は高僧の手の平を見て、「当選番号は55だ」と一目散に宝くじ売場に駆け出したという。この番号が当たったかどうかは分からない。

タイ語で「ピー」と呼ばれる精霊が、当選番号を教えてくれると信じている人もいる。地元の有力新聞によれば、3年ほど前、中部タイのピーサノルークで直径60センチもある巨大なキノコが生え、村人がおしろいを塗ってなでたところ、番号が浮かび上がったという。有力紙が続報を伝えないところを見ると、たぶん、その番号は外れだったと思われる。
抽選会場の雰囲気は日本と似ている。数個のアクリル製のコマを若い女性が回して、マークで止まった番号を組み合わせて当選番号が決まる。ところが、外れた宝くじを破りながら、喜んでいる人を見掛ける。
タイでは公営の宝くじの当選番号を利用して、違法なトトカルチョがはやっている。女中さんや運転手仲間が集まって公営宝くじの当選番号に少し手を加え、私営宝くじを楽しんでいる。
例えば、当選番号を逆さまに読むなどである。私営の方が政府の取り分がないだけ、払い戻しが有利だ。
抽選会場で喜んでいる人は、公営の宝くじには外れたが、私営トトカルチョに当たった人だ。宝くじは夢を買うものだとしたら、タイ人の方が上手に楽しんでいるように見える。
写真:バンコクの宝くじ売り場
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