第32回 中国の願いを映す高速鉄道 直井謙二
第32回 中国の願いを映す高速鉄道
今年7月、「中日友好協会」の招待で北京と天津を見学した。北京から天津までは中国ご自慢の高速鉄道の旅となった。
新しく完成した北京南駅にバスで向かう。巨大な新駅に近付くと、バスはらせん状の道路を登っていく。
ガイドを務めてくれた中日友好協会の職員は「出発は2階、到着は1階だ」と言う。2階の出発口には巨大な車のアプローチがある。出発ロビーに入ると、まさに空港ロビーだ。天井が高く、広いロビーには無数の椅子が並んでいて出発時間を待ち合わせる乗客でごった返している。電光掲示板には出発時間と空席情報が表示されている。
改札は日本と同じように切符を改札機に挿入すると改札ドアが開くシステムだが、中国ではまだ慣れていない客が多いのか、係員が乗客の手助けをしていた。ホームにはすでに天津行きの列車が到着していた。
先頭車両には「和諧」の文字が書かれている。「調和、ハーモニーという意味だ」と中日友好協会の職員が教えてくれた。

折から新疆ウイグル自治区では大規模なデモが起き、漢民族の商店や金融機関が破壊された。中国政府は前回のデモを取材規制し、国際社会から非難を浴びたことから、7月のデモは外国報道機関に自由に取材させるという異例の措置を取った。
ところがその映像がインターネットを通じて中国国内に流れた。その結果、漢民族が逆にウイグル族を攻撃する騒ぎが起き、中国政府にショックを与え、胡錦濤国家主席はイタリアで開かれたサミットの途中で帰国した。
民族の調和は、50以上の民族を抱える中国では最重要課題だ。未来を担う高速鉄道の先頭に書かれた「和諧」の文字は中国政府の切実な思いが映しだされているように思われた。
天津までわずか40分で到着。天津はこれまで遅れを取ってきた北部の開発拠点として期待されている。シンガポールとの共同開発の地区は環境に配慮し、エコにも注意を払った中国ご自慢のプロジェクトだ。
環境、温暖化などは、中国が抱えるもう1つの問題だ。中国文化を育んできた黄河も渇水が続き、海を越えて飛来する黄砂は日本にも大きな影響を与えている。
対外的には主権を盾に強硬な姿勢を示す中国だが、民族和解と環境問題に重い腰を上げようとする中国政府の姿勢を、「和諧」の2文字に垣間見た気がした。
写真:中国の高速鉄道
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