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〔50〕日本からアジア各国へはアメリカ系航空会社便が安かった 小牟田哲彦(作家)

〔50〕日本からアジア各国へはアメリカ系航空会社便が安かった 小牟田哲彦(作家)

〔50〕日本からアジア各国へはアメリカ系航空会社便が安かった

円安や中東情勢などの影響で海外旅行の費用が上昇している昨今だが、海外旅行時の費用を最も大きく左右するのは、昔も今も日本と現地との往復交通費であることには変わりがない。1970年代までは香港やフィリピンへ、2000年代初めまでは韓国、中国大陸、ロシア、台湾へ旅客フェリーで渡るという選択肢もあったが、通常は往復とも航空便を使う。ただ、今よりもずっと円高だった1990年代から2000年代初めごろまでは、アジア各国との往復航空便は日系か相手国のナショナルフラッグのどちらかを選択する場合、日系の航空会社の方が高いとほぼ相場が決まっていたので、安さを追求するなら相手国の航空会社のフライトを選択しやすかった。

ところが、東アジア及び東南アジアの一部の国々に対しては、これ以外に第3の選択肢があった。それが、アメリカ系航空会社を利用する方法である。具体的にはユナイテッド航空かノースウエスト航空(現在はデルタ航空に吸収されて消滅)の2社で、アメリカから太平洋を越えて日本に飛んできた便が、さらにもう1ヵ国、別のアジアの国までフライトを継続させていたのだ。これは、以遠権という営業上の権利に基づいている。

2国間のフライトには通常、両国の航空会社がお互いに直行便を設定する。そして日本は、日系の航空会社の権益を守るために以遠権をほとんど認めない航空政策を採っていた。ところが、第2次世界大戦後の混乱期に日本の民間航空会社の立ち上げに協力したことから、アメリカのパンアメリカン航空(パンナム)とノースウエスト航空に、日本からアジアのどの地点にも運航できる以遠権が認められていたのである。その後、パンナム航空の以遠権はユナイテッド航空に引き継がれている。日本からアジア各国へのアメリカ系航空会社による航空券は、この以遠権を根拠として販売されていた(画像はノースウエスト航空による成田からソウルまでの搭乗券)。

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ノースウエスト航空の成田→ソウル便の搭乗券(1997年発行)。右下に手書きで「午後6時~620分」との搭乗時刻が記載されている。ソウル・金浦空港到着は2040分で、ソウルからの復路は午前900分発。価格は9月上旬の週末をはさんで往復で36,000円だった

このアメリカ系航空会社によるアジア方面便の行き先は多彩だった。ソウル、北京、上海、台北、香港、バンコク、シンガポールには両社の便が飛んでいたし、ノースウエスト航空はマニラにも飛ばしていた。そして、いずれも航空運賃はその区間の最安値であることが多かった。日米間を結ぶ便がメインコースであり、以遠権によるフライトは日本を夕方に出発して現地に深夜到着、翌日の早朝に現地を出発して日本に午前中に戻る、というフライトスケジュールが一般的だったからだろう。つまり、3泊4日のアジア旅行にこれらのアメリカ系航空便を利用すると、初日の深夜便と最終日の早朝便を利用するため、実質的な現地滞在は中2日だけになってしまう。それでも構わない、という人だけが利用するため、価格が安かったのだ。LCCという格安航空会社の存在がまだ一般的ではない時代でもあった。

近年はアライアンス(航空会社連合)を基軸とするコードシェア便による共同運航が主流になったこと、アメリカとアジア各国との直行便が多く設定されるようになったことなどから、従来の以遠権路線は2020年のデルタ航空による成田~マニラ線運休とともに一度は消滅。ただ、2024年に成田~セブ島線がユナイテッド航空の以遠権路線として復活しており、依然としてこのアメリカ系航空会社による日本からアジアへの以遠権は有効となっている。


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