中南米諸国、政治的には右派潮流に乗りながらも、経済は依然中国との関係重視か 日暮高則(アジア問題ジャーナリスト)
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中南米諸国、政治的には右派潮流に乗りながらも、経済は依然中国との関係重視か
米国と並ぶ海洋覇権国を目指す中国は南シナ海、東シナ海の制圧を進め、その先にインド洋、さらには太平洋への進出を狙っている。最近、台湾とフィリピンの間バシー海峡近くのフィリピン領バタン諸島を「中国領だ」と言い始めたのも、東シナ海から太平洋に出るルートを確保したいと望む北京当局の意向を反映したものであろう。その先に見据えているのは、南米大陸との交易、利権確保だ。中南米諸国は米国への反発からもともと反米意識が強く、左翼政権の国が多かった。ところが、2025年にトランプ政権が誕生し、今年初めに、米特殊部隊がベネズエラに侵攻、マドゥーロ大統領の身柄を確保、連行したことで情勢が一変した。ドンロー主義を掲げるトランプ大統領の”怖さ”を再確認したためであろうか、中南米諸国の首長選挙では次々に右派候補が勝利していった。「中南米との関係強化で太平洋進出、海洋覇権を確かなものにしたかった中国にとっては計算違いではなかったか」と国際情勢アナリストは指摘する。中国と中南米諸国との関係は今後どう構築してされていくのであろうか。
<マドゥーロ逮捕、連行の影響>
マドゥーロ逮捕で一番敏感に反応したのは、コロンビアのグスタボ・ペトロ前大統領であろう。同氏は左翼ゲリラ出身であり、政権時代米国に強硬姿勢を見せたりしていた。コロンビアには左翼ゲリラ組織「国民解放軍(ELN)」がいて、麻薬コカイン製造にも関わっており、そのコカインは米国にも入っていると言われる。ペトロ政権は表面的にはELNを抑える構えを見せていたが、米政府は「政権側も麻薬製造に加担している」として信用していなかった。トランプ大統領もペトロ氏について、「コカインを製造し米国に売るのが好きな、病んだ男が国を治めている」と決め付け、マドゥーロ氏と同様にペトロ大統領個人、周辺にも制裁を課した。2025年9月には、ペトロ氏が国連総会に出席しようとしたところ、米国は入国ビザを取り消そうとしたほどだ。
中東のメディア「アルジャジーラ」が昨年12月中旬に報じたところによると、ELNは最初に狙われるのは自らのアジトであり、米軍の空爆などを予想し、対空砲などの反撃態勢を取っていたという。当時、ペトロ大統領はELNと決裂状態にあったが、米国が侵攻してくれば再びELNを利用したいとの思いもあったようだ。さらには、ベネズエラとともに南米左翼政権による抗米共同戦線の構築も考慮していたとも言われる。このため、トランプ氏はその後さらに発言をエスカレートし、ペトロ氏本人に対して実力行使も辞さない姿勢を示したほか、ベネズエラに続いてコロンビアへの攻撃も計画していると思わせる情報を発信した。
マドゥーロ逮捕でペトロ大統領の構想が一気に崩れたほか、改めて米国の軍事力を認識し、態度を100%変化させた。ペトロ氏は2月早々、トランプ氏の軍門に下るように、わざわざワシントンに足を運び、麻薬組織の厳重取り締まりを約束した。さらに、ベネズエラの天然ガスをコロンビア経由で輸送することにも同意したという。以前には互いに罵り合っていた間柄だが、会談は「きわめて友好的」で、ペトロ氏は麻薬撲滅を約束したという。コロンビア国民はペトロ氏以上に米国の怖さを再認識したようで、今年6月21日に行われた大統領選挙では、左派候補でなく、右派のアベラルド・デラエスプリエジャ氏を選択した。
選挙管理委員会によると、デラエスプリエジャ氏と左派のイバン・セペダ氏との票差は1,2ポイント程度の僅差であり、当初、セペタ氏は敗北を認めない態度を示した。左派候補を支援したペトロ大統領も「外国勢力の介入など不正があった」として選挙結果を批判したが、最終的に右派候補の勝利は動かなかった。デラエスプリエジャ氏は当選後、「分断や政治的対立は終わりにし、祖国への奉仕という重要な時期を迎えよう」と述べ、左派勢力にも迎合するような姿勢を示した。その一方で、「安全なくして自由はなく、権威なくして民主主義はない。祖国を守るために尽くす警察官や兵士のような英雄なくして国家は存在し得ない」とも述べ、トランプ氏と同様に、麻薬を扱う武装勢力には強い姿勢で臨む覚悟を示した。
トランプ氏の“威風”はチリにも及んだ。2025年12月の同国大統領選で、右派のホセ・アントニオ・カスト大統領が選出された。「アルジャジーラ」によれば、この就任式の前にカスト氏のポートレートが公開され、この中で同氏は軍服を着用、かつての独裁者ピノチェット氏が使ったのと同様の徽章が入った襷(サッシュ)を掛けていたという。ピノチェット氏は1973年の軍事クーデターで権力を掌握し、民主的に選出された指導者を追放した。独裁体制を強める中で反対分子を獄につなぎ、3000人以上を死亡させたと言われる。今年60歳のカスト氏は若いころ、ピノチェット支持勢力の一員として活動し、自らの選挙でもその過去を封印しなかった。
近年の調査でも、チリ国民の3分の1以上がピノチェット統治を支持し、今回大統領選挙の決選投票でも700万人以上がカスト氏に投票したと言われるほどで、同国は右傾化を強めている。カスト氏がピノチェット氏への敬意を示したということは、国内の反対派を弾圧するとの方向性を明確にしたことでもある。カスト大統領は3月11日行った就任式の中で、政府の歳出削減、規制緩和の自由主義的な政策の推進のほか、移民、犯罪の取り締まり強化など保守的政策を進めていくことも宣言した。外交的には、アルゼンチンのミレイ大統領と同様に、トランプ米大統領のドンロー主義に加担していくものと見られる。
<トランプ氏の次の標的>
トランプ米政権は、キューバの次の打倒目標として中米ニカラグアの左翼政権に狙いを付けたようだ。同国で拘留中であった反体制の先住民指導者ブルックリン・リベラ氏が5月に死去したことを受けて、6月8日、100人を超すニカラグア政府幹部やその家族に対し米入国ビザ発給禁止などの制裁を課した。ニカラグアでは1979年のサンジニスタ革命で左派政権が誕生、その後ダニエル・オルテガ氏の強硬派が大統領に就くなどキューバと同様に、長期にわたって反米的な独裁政権が続いている。リベラ氏は「オルテガ政権が人権抑圧している」と批判をしたため、2023年に拘束され、ずっと拘留されていた。
このため、トランプ大統領や、マルコ・ルビオ国務長官などは不快感を募らせた。特に、同じ中南米キューバ出身の両親を持つルビオ長官は「オルテガ独裁政権を無視することはできない。ニカラグア人民はリベラ氏同様に自由を渇望しているからだ」と強調した。米国は今後ますます大統領個人やその周辺への制裁をエスカレートさせ、圧力を強めていくと見られる。だが、オルテガ大統領は却って反米姿勢をエスカレートし、独裁体制をますます固めた。現行6年の大統領任期を1年延長するほか、妻ムリージョ女史を「共同大統領」に指名し、自身に万一の事態が生じた場合、妻が政権を引き継ぐ方策を探っている。大統領の支配下にある国会も9月に、この法改正を承認する見込みであるという。
オルテガ氏は2007年の政権奪取後、19年間ほぼ最高指導者の地位にいる。この間、2014年には大統領任期制限を撤廃したほか、任期そのものを2024年には5年から6年に延ばした。その一方、「裏切り者」や「クーデターの共謀者」とみなす野党のメンバーが大統領選に立候補するのを禁止する憲法改正案を打ち出した。オルテガ氏は現在80歳だが、今回の任期再延長や妻の権力引き継ぎ方策の構築で当面“オルテガ王国”を保持していく構えだ。近年、中南米はトランプ米大統領のドンロー主義主張の影響を受けて保守的大統領が多く出現しているが、ニカラグアはそれを逆らうように一貫して反米左派の姿勢を貫いている。
もともと米国の中南米における“宿敵”はキューバであった。1962年、キューバにソ連のミサイルが持ち込まれそうになったため、時のケネディ米政権が反発。海上封鎖を行ったことで、一時「米ソが全面核戦争に向かうのではないか」と言われる状態になった。歴史に残る「キューバ危機」である。この時、キューバを率いていたのは建国の父フィデル・カストロ氏(国家評議会議長)であり、その後2016年に死亡するまでずっと権力を保持していた。死後も実弟のラウル氏が最高指導者の地位を引き継ぎ、社会主義の名の下で”カストロ独裁体制“を続けた。しかし、ラウル氏は2023年を最後に公的な場から姿を消し、その一方で、2018年以降、カネル大統領が国家評議会議長、大統領に就任し、権力を掌握した。
米国のトランプ政権はこのキューバ政権を目の敵にし、さまざまな形で圧力をかけた。キューバは盟友のベネズエラやメキシコから石油を供与されていたが、マドゥーロ拘束、連行事件後、米政権の圧力で石油供給が止まった。トランプ大統領がキューバの体制崩壊を狙って諸外国に石油輸出をしないよう求めたのだ。同国はサトウキビや葉巻の農産品以外に主だった産業がないため、経済は悪化している。頼みの友好国ロシアは戦争中であり、中国も自らの経済悪化から十分な支援ができない。石油が入らないことから、発電にも影響を及ぼし、現在キューバはしばしば全国的な停電に見舞われている。それでも国民は「トランプの恐喝には負けない」とばかりに必死に耐え忍んでいる。
フィデル・カストロ氏の娘であるアリーナ・フェルナンデス・ロベルタ女史は米国に亡命したことで有名だ。彼女は今年3月30日、滞在先の米フロリダ州でインタビューに応じ、「キューバはずっとソ連に頼ってきた国。ソ連崩壊後に援助が止まった後は長期の経済不況に陥った。共産主義政権は早くに倒れるべきだった」とキューバのもともとの脆弱性を指摘した上、父親の政権維持の正当性まで否定した。同女史はまた、「共産主義政権は圧政的であり、それが国家の脆弱性を生んでいる。その現実を父親にも直言したが、聞く耳を持たなかった」「2016年に父親が死去した時、共産主義政権は終わると我々は予想したが、その後も家父長制の政権が続いた」などとも語った。米国はこうしたマイナス情報をキューバに流し、国民の士気の阻喪を狙っている。
<ペルーとパナマ運河のその後>
中南米の右派潮流はさらにペルーにも波及する。右派のケイコ・フジモリ大統領が今夏7月に就任した。女史は日系アルベルト・フジモリ元大統領の娘で、父親同様反政府武装勢力などに厳しく対処する姿勢を見せる。このため、外交的にもトランプ米政権と歩調を合わせて、反中国姿勢に傾くことが予想される。中国最大の海運企業「中国遠洋海運集団」傘下の「COSCOシッピング・ポーツ(中遠海運港口公司)」が広域経済圏構想「一帯一路」政策を受けて、太平洋対岸のペルー中部にチャンカイ港という名の港湾開発を進めてきた。中国にとっては重要な貿易拠点だが、リマの裁判所はこの7月初め、同港をペルー政府の監督下に置くよう求める裁決を出した。
実は、リマの下級審は今年1月、「ペルー政府公共交通インフラ投資監督局(Ositran)がCOSCOによるチャンカイ港使用に制限を加えてはならない」との裁定を下していた。しかし、監督局のプレスリリースによれば、2審のリマ高等裁判所は、1審の裁決を覆し、「COSCOのプライベート使用は許さない」との再裁定を出したという。トランプ米政権は1審判決に不快感を示していたので、2審の裁定は米国の“影響”も感じられる。事実、リマ駐在の米国大使は歓迎の意を表した。あるいはペルーの裁判所が間もなく就任(7月28日)するフジモリ大統領の政治姿勢に配慮したのかも知れない。この辺からも、同国全体の政治状況の変化が感じられる。これに対し、COSCO側は最高裁に上告することを決めた。
パナマ運河をめぐる米中のせめぎ合いはどうなったか。パナマ最高裁は今年1月、香港企業「CKハチソン」がパナマ運河入り口のバルボア、クリストバル2港湾の権益を持つことに対し「違憲だ」との判決を出した。明らかになっていないが、これもチャンカイ港同様、米側の圧力があったと想像が付く。パナマ政府はその後、実際に、香港やその後ろ盾である中国の船舶がパナマ運河を自由航行することに制限を加え始めた。中国当局はこの制限措置に怒り、報復に出た。それは最近、中国の国内港湾に入るパナマ船籍船に立ち入り検査したり、拿捕したりの対応を取っていることだ。他国が経済上の支障を与えた場合、透かさず対抗措置を取るというのは中国側の常套手段であり、予想された行動であった。
中国国内のパナマ船舶規制に対して、ルビオ米国務長官は4月2日、「世界的な供給網の安定や国際貿易システムの信頼を損なうものだ」「中国は経済手段をもってパナマの法治を破壊しようとしている」と激しく反発した。そして、4月28日には中南米諸国5カ国とともに共同声明を出し、外国船舶に対する中国の“威嚇”を厳しく批判した。だが、中国の林剣報道官は「ルビオ発言は白を黒に変えるようなものだ」「米国は永久中立であるべき国際航路を自国の水路にしてしまった」と、むしろパナマ運河の通航制限に言及し、激しく非難した。
パナマ運河問題とは、もともと香港企業「CKハチソン」がビジネスベースで米国の資産運用会社「ブラックロック」に両港湾の権益を譲渡する意向を示したことが発端。その後、「運河の通航権限を中国に渡さない」という米側の意向を汲んで、パナマ政府が交渉に介入した。同国は「運河はパナマ政府が所管するが、運営は米側に任せる形が良い」と考えているようで、今年1月の最高裁判決もそうしたパナマの思惑を反映している。だが、中国当局は運河の自由な通航確保のため、香港企業に譲渡させないよう求めた。この結果、運河権益をめぐる米・香港企業間の譲渡話は、事実上中南米航路の要衝確保をめぐる米中国家間の “代理闘争”へと発展した。
パナマ政府は中国との全面対決を避けたいようで、ホセ・ムリーノ大統領は、中国国内での拿捕、立ち入り検査について「中国の報復とは思わない」と語り、穏便な解説策を模索している。それでも米国は強硬姿勢を崩さない。米メディア「フォックス・ニュース」の報道によれば、ルビオ国務長官は、パナマ運河の管轄管理権に関連して、「西半球(諸国)の主権問題で中国側と交渉する余地はない」と語った。ルビオ氏の発言は、「西半球ではドンロー主義で行く」というトランプ大統領の考え方に沿ったもので、パナマ運河だけでなく、中南米諸国全体で中国の影響力を完全排除していく意思を示したものとも受け取られている。
<それでも中国関係重視>
今注目されているのは、10月に投開票を迎えるブラジルの大統領選だ。左派系のルラ現大統領と右派のフラビオ・ボルソナロ氏の一騎打ちであり、南米全体がトランプ寄りに右傾化する中で、同地域最大国家のブラジルが左派の牙城を守れるかどうかで世界的に注目されている。フラビノ氏は上院議員であり、父親は有名なジャイール・ボルソナロ前大統領。軍事蜂起を誘発しようとしたなどとして有罪判決を受け、現在獄中にある、フラビノ氏は父親の釈放を目指し、ルラ氏の再選を阻止するため、大統領選への出馬を決めた。主張する政策は、父親の路線を引き継いでトランプ氏、米政権寄りであり、移民や麻薬対策で強硬姿勢を見せ、開発重視の経済政策を取る考えを示している。
一方、ルラ氏はアマゾン熱帯雨林の保護など環境重視の政策を進め、対外的には中国、ロシアなどが入る「BRICS」の一員としてこれら諸国との関係を強化する方向だ。8月上旬に行われた調査機関の世論調査では、現職ルラ氏が5%の差で若干リードしているという結果が出た。ただ、双方の支持は依然伯仲しており、このために非難合戦が激化している。フラビノ氏は、ルラ氏とベネズエラのマドゥーロ左派政権の関係密接さを強調し、麻薬・武器取引の犯罪にも手を染めていると指弾した。これに対し、ルラ大統領はジャイール・ボルソナロ前大統領支持者の国会襲撃、「クーデター未遂」を改めて持ち出すとともに、「フラビノ氏のルラ非難発言が度を越している」として名誉棄損で捜査するよう警察に求めた。
ブラジル最高裁判所はルラ大統領に迎合するように、今年4月15日、連邦警察に対し、フラビノ・ボルソナロ氏がルラ大統領に対し名誉棄損的な発言をしたかどうかで調査するよう命じた。政府、司法機関はルラ氏寄りである。だが、アルゼンチン、チリ、コロンビア、ペルーと南米に右派政権が次々と誕生しているほか、米軍によるマドゥーロ逮捕、連行事件を受けて、ブラジル内も右派勢力の台頭が見られる。このため、フラビノ氏はむしろ最高裁の決定を逆手に取って、有権者には「当局と左派勢力に追いやられる悲しい候補者」と印象付けて同情を誘い、選挙戦を有利に進めたい構えのようだ。中国は南米における“橋頭保”確保のためにも、経済協力などをほのめかしてルラ再選を後押ししていくだろう。
中国はブラジルに限らず、米国の中南米諸国への勢力拡大に手をこまぬいているわけでない。党中央対外連絡部の劉海星副部長が8月8-10日、代表団を率いてキューバを訪問し、「フィデル国際対話」という名の第一回シンポジウムに出席した。フィデルとはもちろん同国の元最高指導者フィデル・カストロ氏の名から取ったもので、キューバが覇権主義に対抗して国家の主権、安全を図り、社会主義を完遂していく上での課題について両国代表が話し合ったという。外電によれば、キューバが電力不足に陥っていることから、「太陽エネルギーの導入支援を行う」と中国側が申し出たようだ。これまでも太陽光パネルの供与を行ってきたが、さらに大規模な太陽光発電所を設ける計画。これによって、同国のピーク電力需要量の約3分の1は確保できる見込みだという。
アルゼンチンは昨年まで中国の中南米第2の貿易相手国であり、両国関係は良い。だが、膨大な財政赤字を抱え、経済苦境を脱し得ないことから、国民は米国頼りへの変化を求めた。昨年11月に実施された大統領選挙で、右派のハビエル・ミレイ氏が左派候補を破って当選。12月に就任した同氏はトランプ大統領との緊密な関係を誇示し、実際に米企業の投資などをトランプ氏に約束させたほか、400億ドル規模の支援を米政府から受けた。その一方で、したたかなミレイ大統領は中国との関係を切ることなく、安定的な通商関係やスワップ協定の延長も求めている。外貨不足の同国にとって通貨スワップの構築は重要な施策。つまり、右派政権といえども経済的には引き続き中国頼りを続けたい意向のようだ。
エクアドルのダニエル・ノボア大統領は右派色が強いが、8月16日、中国を公式訪問し、一帯一路の共同建設や自由貿易協定の文書に調印している。中国はエクアドルにとって第2位の貿易相手国であり、中国にとっては中南米で第8位の貿易相手国。エクアドルは戦略物資の石油、鉱物のほか、農水産物を輸出している。このため、ノボア大統領にとって政治的に親米のスタンスを取りながらも、経済上中国は無視できない国なのだ。前述のチリも右派のカスト大統領体制になったが、8月18-22日、王毅外交部長の招待を受けてペレス・マッケンナ外相が北京を訪問した。チリの「重要鉱物」への投資拡大が話し合われるという。
レアアースに限れば、西側大国は今、中国を度外視したサプライチェーン構築を目指している。ブラジルはBRICSでの関係がありながらも、米側とのレアアース開発に乗り気だと言われる。だが、中南米諸国は政治的にはトランプ米政権と誼を通じて、反政府勢力の打倒、麻薬の取り締まりなどで右派潮流に乗りながらも、経済、貿易面ではしっかり中国とつながろうとしている。このため、この地域をめぐる米中のせめぎ合いは当分続いていくのであろう。(了)





