1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第496回 アジアの海洋汚染プラスチックゴミ問題  直井謙二

記事・コラム一覧

第496回 アジアの海洋汚染プラスチックゴミ問題  直井謙二

第496回 アジアの海洋汚染プラスチックゴミ問題  直井謙二

第496回 アジアの海洋汚染プラスチックゴミ問題

有害廃棄物が国境を越え移動するのを規制するバーゼル条約に新たにプラスチックゴミを加えることが今年の4月スイスで開かれた条約締結国会議で採択された。日本もレジ袋の有料化が進んでいる。そしてアジアは特にプラスチックゴミが多い。プラスチックゴミを排出は中国が群を抜いてトップでおよそ年間350万トン。2番がインドネシアで110万トンなどアジア諸国が1位から6位までを独占している。6位のタイでは共働きの主婦が手軽に屋台で出来合いのおかずなどを買いレジ袋に入れてもらって帰宅する「ビニール主婦」と呼ばれる人が多くいる。

プラスチックの袋は毎日ゴミとして捨てられる。現在も一部で水路が交通手段として使われているバンコクでは外来種のホテイアオイが繁殖し、船のスクリュウに絡み問題になっているが、最近ではプラスチックゴミもさらに加わった。
ホテイアオイは絡むだけだが、プラスチックは時を経て粉砕されマイクロプラスチックになり魚や貝を通して人体にも入り込む。

スマトラ島のスラバヤからスラウェシ島を抜けバンダ島までおよそ1200キロを小型の貨物船(写真)に乗って取材したことがある。インドネシアの青い海と空は旅ゆくものに感動を与える豊な自然に恵まれている。2週間の船旅のなかで、船酔いや船の座礁の危機を乗り越えバンダ島の港に着いたときは正直ほっとした。

長い船旅で寝食を共にするとインドネシア人の船員とも別れがつらくなる。観光客もほとんど来ないバンダ島の港は海底まで澄み切っている。イワシのような小魚が群れを成して泳いでいるのが肉眼でも見ることができ、まるで水族館の様だ。

下船の用意をしていると2週間の間に出たゴミの袋が目に入った。ゴミのほとんどがスラバヤで買った食料を包んでいたプラスチックの袋やトレイだ。ゴミの処理はどうするのかインドネシア人の船員に聞いてみても船員は質問の趣旨が理解できないのか要領を得ない態度だ。それでも再度ゴミ処理の方法を聞いた。すると船員はなんとつまらないことを聞くのかというような表情を浮かべ、筆者からゴミ袋をひったくりゴミを海に投げ捨てた。

ゴミは澄み切った海の中で拡散し小魚の群れが餌と間違えて寄ってきた。ゴミは魚の群れを通過して海底に沈んでいった。

驚く筆者をよそに船員は何故こんな簡単なことが出来ないのかと不思議そうな顔をしている。言語の問題もあるがあまりの意識の隔たりに言葉を失った。

プラスチックゴミは海を通じて世界的な問題になり、意識の差などとのんびりしていられなくなってきている。

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回  
《アジアの今昔・未来 直井謙二》次回
《アジアの今昔・未来 直井謙二》の記事一覧

 

タグ

全部見る