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第33回 爽快な白銀の稜線を漫歩 小白山 森正哲央

第33回 爽快な白銀の稜線を漫歩 小白山 森正哲央

第33回 爽快な白銀の稜線を漫歩 小白山

約20キロ余りと長く延びた小白山は、忠清北道と慶尚北道の道界に位置する。朝鮮半島を南北に貫く白頭大幹の主要な脊梁で、その稜線は1000メートルを越える高原をなし、歩きやすく、爽快な山行を味わえることから人気だ。主な峰は北から兄弟峰(1178m)、上月峰(1395m)、国望峰(1421m)、毘盧峰(1440m)、第一蓮花峰(1394m)、蓮花峰(1383m)、第二蓮花峰(1357m)、三兄弟峰、兜率峰、妙積峰で、このうち主峰の毘盧峰と、国望峰、蓮花峰が「小白山三峰」と呼ばれる。1987年、小白山国立公園に指定された。

麓には華厳宗の根本道場・浮石寺、天台宗本山の求仁寺、韓国で最初の書院(在郷の儒教教育施設のこと)、紹修書院などの仏閣・史蹟が点在する。第二蓮花峰と兜率峰の間の竹嶺(689m)はかつて、忠清道と慶尚道を結ぶ交通の大動脈だった。竹嶺トンネル(4600m)開通で使われなくなったが、現在は散策コースとして脚光を浴びつつある。

広い稜線は春から初夏にかけてツツジの紅色に染まり、5月に小白山ツツジ祭が開かれる。夏にはエーデルワイスはじめ多くの高山植物が咲き、天然の花園となる。毘盧峰、国望峰一帯に広がる韓国最大のイチイ群落は、天然記念物にも指定されている。西の泉洞渓谷、北西の於衣渓谷、東の竹渓川谷などを起点として、さまざまな登山コースがある。今回は白銀の稜線漫歩を味わうため真冬の小白山を訪れ、南のタルパッ谷から毘盧峰に登り、蓮花峰まで縦走、南東の喜方渓谷へと下った。

小白山南麓の平野に広がった中都市・栄州から三街里の登山口へバスで向かう。栄州市街を抜けると、兜率峰はじめ小白山の山並みが左手に現れる。途中、高麗人参で有名な豊基の街中を通過する。豊基の高麗人参は李朝で珍重されたそうだ。

中央線の線路を越え、バスは山すそを登る。貯水池の金鶴湖を過ぎ、栄州から約30分、終点の三街里についた。まずは渓谷沿いの車道を歩く。300m行くと駐車場、さらに登ると小白山裾道広報館、三街キャンプ場が現れる。時間が早いためか広報館は閉まっており、中は覗けなかった。

キャンプ場から約1.3キロ、車が一台通れる舗装道を上がって行くと毘盧寺の門前につく。境内には入らず、右折して小橋を渡り、坂道を350mほど行くと分岐があり左へ。ここから本格的な山道となる。

息をきらしつつ急勾配を25分登ると支尾根にでる。松林からカエデ、マルバアオダモ、ミズナラ、チョウセントネリコなどの雑木林に変わり、足が雪にとられるようになってきたのでアイゼンを付ける。ヤンパン岩(1150m)を過ぎ、ツツジの群生地を抜け、雪に埋もれた急階段をひと頑張りすると毘盧峰の広い山頂にでた。

北には雪を抱いた国望峰、上月峰、西南には第一蓮花峰、蓮花峰の雄大な山岳パノラマが広がる。抜けるような青空に白い稜線が映えてひときわ鮮やか。だが雪煙が上がるほどの強風に、汗をかいていたのが嘘のように震え上がった。ゆるやかな階段を400mくだって待避小屋に駆け込み、腹ごしらえする。強風から逃れるように、次から次へと登山客が避難して来るので狭い小屋の中はひどく混み合った。

身体が暖まったら、蓮花峰へ向け約4.3キロの縦走を開始する。多少アップダンウンがあるが、雄大な展望を味わいながらの稜線歩きに心が浮き立つ。道から外れると股までずっぽり埋まってしまうほどの積雪で、隣の太白山より深い。だが、山道に沿ってロープが張られており、道を踏み外さなければ特に危ない場所はない。

待避小屋から約1時間で約2.1キロ南西の第一蓮花峰のピークを過ぎ、さらに50分で蓮花峰の広い山頂につく。蓮花峰のピーク下には韓国最大の天文台、国立天文台小白山天体観測所があり、その1.5キロ余り先、通信中継所のアンテナが建っているのが第2蓮花峰。第2蓮花峰からさらに3.6キロ余り下ると竹嶺にいたる。

猛烈な風は尾根だけで、蓮花峰から下り始めると、すぐ暑くなり上着を脱いだ。ミズナラ林を下って行くと喜方カルタク峠につく。ここから支尾根と別れ急下降する。日陰に雪が残り、何度も滑りそうになる。

峠から約30分で喜方寺に到着。新羅時代の643年に杜雲大師が創建したと伝えられ、朝鮮戦争で消失したが、1954年に再建された。喜方寺から200mの喜方瀑布は「嶺南第一滝」の美名をもつ高低差20m余りの名瀑だ。だが滝筋は完全に凍り、真冬の静寂に包まれていた。

滝から250m歩くと喜方寺の観覧券売場、駐車場があり車道にでる。喜方寺入口のバス停まではさらに30分ほど下る。歩き出そうとしたところ、40歳くらいの男性が「車に乗って行きませんか」と声をかけてくれた。仁川にある大学の先生で、これから雪岳山へ行くという。高速道路経由で堤川まで送ってもらい、山行を終えた。

●アクセス(バス)
・栄州市街~三街里 栄州市外バスターミナルそば(前ではない)の停留所から26番バス乗車。1日8本。始発6時10分~終発17時50分。
・栄州発~喜方寺 25番バス。1日13本。栄州旅客・始発6時20分~終発18時30分。

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