1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第8回 鬱陵島に聳える孤高の峰 聖人峰 森正哲央

記事・コラム一覧

第8回 鬱陵島に聳える孤高の峰 聖人峰 森正哲央

第8回 鬱陵島に聳える孤高の峰 聖人峰 森正哲央

第8回 鬱陵島に聳える孤高の峰 聖人峰

今回は鬱陵島の聖人峰(984m)を紹介したい。鬱陵島は韓国本土から東に約130キロの海上に位置し、面積は72平方キロメートルで八丈島とほぼ同じ大きさ。年平均気温12度の温和な気候で、冬は暖かく夏は涼しいが、積雪が非常に多い。鬱陵島は、硫黄島や利尻島と同じように海底火山の活動によってでき、島の中央部にそびえる最高峰の聖人峰はじめ、兄弟峰(915m)、弥勒山(900m)、羅里峰はカルデラの外輪山にあたる。ブナ林をはじめ、シナノキやイタヤカエデが鬱蒼として、深山を歩くような山行が楽しめる。

聖人峰に登るためには、鬱陵島への移動を含めて最短でも1泊2日は必要。ちなみに今回は、江原道東海市の墨湖港から午前9時発の高速船に乗船、午後12時30分に鬱陵郡庁がある道洞港に上陸。2日目の朝から聖人峰へ登り、午後5時半の高速船で再び東海へ戻った。

聖人峰へ起点となるのは南の道洞と島北東の天府里。道洞からは大願寺、KBSテレビ中継所、内平田をそれぞれ登山口とした3コース、天府からは羅里盆地を経る1コースがある。大願寺と中継所からの両コースは途中で合流する。今回は道洞の大願寺から登り、羅里盆地へ抜けた。

山行は、道洞の目抜き通りを一周道路(地方道90号線)へ向かうところから始まる。鬱陵邑事務所前を過ぎ一周道路にぶつかったら左へ。すぐに大願寺へ向かう小道へと右折する。大願寺を通り過ぎる前に、手前の急坂へともう一度右折する。やがて視界があけ、海に向かってのびる道洞の聚落、その右手に迷彩色を施した軍事施設や電波塔が立つ望郷峰が見えてくる。舗装路が終ったら樹林帯の登りとなり、ハシゴ谷三叉路でKBS中継所コースと合流。三叉路からは山腹を巻くゆるやかな道となる。鬱蒼としたブナ林には程よい湿気があるためか、下生えのシダが青々と繁茂して太古の森に迷い込んだかのように感じる。鬱陵島は300種余りの植物が自生し、その中でも稀種が40余りを数える植物の宝庫となっている。やがてベンチの前を過ぎたら、尾根まで30分ほどの直登。途中の八角亭は、ひと息入れるのにちょうど良い。明るい尾根に出たら、あとは快適に20分ほどで山頂につく。チョウセンブナやシナノキなど貴重な樹木が茂る頂上付近の森は、天然記念物に指定されている。

快晴とはいえ、山頂からの展望は少し霞んでいた。晴れていれば水平線がきれいに見える。隣の峰には大きな空軍レーダー基地があった。20メートル下の展望台からは、カルデラ火口が陥没して形成された羅地盆地が見渡せる。盆地の北部には、中央火口丘の卵峰が隆起している。

景色を堪能したら、羅里盆地へ向けて下る。長い階段が整備されており、途中、雪で壊れた部分を男性が数人で修理していた。日本海の孤島である鬱陵島は、韓国国内で最も積雪が多く、一日で150センチ降った年もある。夏よりも冬に降水量が多い韓国では唯一の場所だという。

盆地までは40分もかからない。後は林道伝いに羅里洞のバス亭へ向かう。途中、島の伝統家屋トゥマクチブの前を通り過ぎる。稲科多年生草本植物のチガヤ(茅萱)を使用していて風や雪に強いそうだ。周囲にはススキの原が広がり、盆地を吹く風に稲穂がさやさやと揺れていた。

部隊駐屯地のフェンス横を抜けバス亭前に出る。近くには数軒だが食堂もあり、マッコリなど飲み休憩するには良さそう。道洞へ戻るには、小型バスで天府へ出て、さらに大型バスに乗り換える。


●島内のバス
・羅里盆地~天府里 1日9本。7時50分~18時20分
・天府里~道洞里 1日18本。6時10分~19時

タグ

全部見る