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第481回 高校野球部OB会の新年会での多士済々 伊藤努

第481回 高校野球部OB会の新年会での多士済々 伊藤努

第481回 高校野球部OB会の新年会での多士済々

本欄では、筆者が50年近く前に所属していた神奈川県の公立高校野球部のOB会活動の様子などを折に触れて紹介させていただいているが、今年の新年会でもさまざまな人生模様をうかがわせる見聞があったので、その一端を綴ってみたい。
 
母校に近いターミナル駅から至近の海鮮居酒屋で開催された毎年恒例の野球部OB会主催の新年会には今年も100人以上の参加者があったが、最も異色の出席者は東京電力の社長を務めるK氏だろう。もちろん野球部のOBではないが、顔が広い事務局長のY君(24期生)の誘いに応じて初めて参加した由で、大広間のあちこちのテーブルで歓談が続く中、あいさつに立ったK氏は、福島原発事故の事後処理など経営面で苦労されていることにも触れながら、日々の生活で東電の電力供給サービスを受けているはずの同窓の参加者たちに東電の新規事業にも関心を持っていただきたいと、押しつけがましくなくPRしていた。筆者の席から離れていたので、報道を通じて人柄などを存じ上げているK氏との直接の会話はなかったが、母校の他の運動部のOB会新年会とはいえ、久しぶりに旧知の同期連中とも酒を酌み交わし、激務の大企業社長にとっては格好の息抜きになったのではないか。

その前後に宴会の司会者役から指名されてあいさつに立ったのは、26期生のOBで、大学野球でも活躍した後、神奈川県の公立高校教員となったT君。T君は県内各地の高校で野球部の監督を務める傍ら、県の高校野球連盟(高野連)の役員の仕事を任されているのは人づてに聞いていたが、近く、その連盟トップの理事長への就任が内定したのだという。実直で誠実な人柄が評価されたのだろう。

ご存じの通り、神奈川県は全国大会である春夏の甲子園大会でも優勝校を輩出するなど、全国でも高校野球の強豪県として知られているが、県内の大会運営などを束ねる組織のトップに高校野球では無名に近い母校の後輩が就くというのは、同じ野球部出身者として心から喜びたいと思ったものだ。そう言えば、筆者が現役の母校野球部の選手だった頃の部長は担任でもあった美術教諭のI先生で、I先生も県の高野連理事として夏の県大会の試合の地元テレビの実況中継で解説者に担ぎ出されていたことを思い出した。後輩のT君の理事長就任内定に泉下の恩師も喜んでおられるだろう。

この夜の新年会では、やはり東電社長のK氏と同期の24期生で、当時のチームで好投手として県大会での上位進出のけん引役となったS君がビール瓶を持ってあいさつにやって来た。高校野球の夏の地方大会で母校チームの応援に駆け付けるS君とはよく知った間柄だが、今回は「神奈川県立T高校野球部OB会 現役サポート室長」という肩書が書かれた名刺を持っており、地元の少年野球チーム出身の同君が同じ経歴を持つ母校野球部の後輩を何人か誘って、野球が上手な子供に早いうちから目を付け、スカウト活動に当たるのだという。

この種のスカウト活動は、全国各地の高校野球名門校、強豪校では昔から行われているそうだが、甲子園出場経験のない母校の野球部OBとして、藁をもつかむ思いで現役サポート室を立ち上げた。大学卒業後に大手銀行に勤めていて人脈もありそうなS君にこの活動を支援する後輩のことを聞くと、「有名私大から厚生労働省の役人になったY君、東京大野球部で投手を務め、今年、経済産業省に入省するM君に声を掛け、勉強と野球が両立できる母校野球部の魅力を小中学生に伝えます」と答えてくれた。話半分としても、近い将来、どのような野球少年が母校野球部の門をたたくか。筆者も今回、母校野球部OB会の顧問を委嘱され、後輩たちの一層の活躍を願う者として、楽しみが一つ増えた。

 

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