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第475回 ベトナム研究の第一人者、坪井教授の外務大臣表彰を祝う会 伊藤努

第475回 ベトナム研究の第一人者、坪井教授の外務大臣表彰を祝う会 伊藤努

第475回 ベトナム研究の第一人者、坪井教授の外務大臣表彰を祝う会

やや旧聞となるが、晩秋の気配が漂う2018年11月のある晩、勤務先のベトナム関係のニュース・情報配信事業でお世話になっている早稲田大学政治経済学部教授の坪井善明(つぼい・よしはる)先生が先ごろ、長年にわたる日越両国間の学術・文化交流活動に対する貢献で外務大臣表彰を受けられたことをお祝いするごく内輪の集まりがあった。呼び掛け人は、わが国におけるベトナム政治・社会史の第一人者である坪井先生に「ベトナム定点観測」と題するコラムの寄稿をお願いして以来、自他ともに「先生の教え子」を任じる元職場の後輩で部下だった高橋伸二君(海外速報部部長、前ハノイ支局長)だ。

幹事役の高橋君の呼び掛けに対し、同君とは昵懇の関係にある筆者の勤務先のベトナム事業パートナーの日髙敏夫氏が早速、内輪の祝賀会の会場として同氏が会員となっている都心の名門クラブの個室を手配してくれた。連絡事項はメールでやりとりし、諸事万端整い、当日は主賓の坪井先生ご夫妻をはじめ、先生に日ごろお世話になっている勤務先の関係者ら計10人が出席した。

舞台装置に関する前置きが長くなってしまったが、名門クラブが供する数々の絶品料理を話題にしながら舌鼓を打ち、高級ワインの酔いもあってか、和やかな歓談が続いた。この夜の祝賀会に馳せ参じた先生ご夫妻以外のメンバーは、濃淡はあれ何らかの形で親日国のベトナムとつながりがある。このため、一同の関心も、坪井先生がなぜベトナム研究の道を歩まれるようになったのかといった問い掛けから、1990年前後に在ベトナム日本大使館専門調査員としてご家族を帯同されてのハノイでの駐在生活の苦労話、来年3月の早大教授退官を前にした年明けの最終講義の準備など、話題は多岐にわたった。坪井先生のお話で特に印象に残ったのは、先生が研究者の道を志した20代のころ、ベトナムの一般庶民がどのような食事をしているかも知らなかったことを反省した上で、研究対象である現地を肌で感じることの重要性を常に念頭に置きながら研究活動を続けられてきたことだった。

現場主義を貫きながら奥行きが深く、幅も広い研究活動の一端は、勤務先がベトナムに進出する日系企業の駐在員向けに電子メールで配信している「時事速報ベトナム便」に寄稿されている「ベトナム定点観測」のさまざまなテーマ、話題の鋭い分析からもうかがえる。読者に好評のコラムはすでに235回を数え、必要な編集作業を施した上で1冊の本として近く刊行する計画も進んでいるそうだ。

早大政治経済学部で長く教鞭を執られている坪井教授には、母校の東京大学出版会から刊行されている専門家向けの著書以外にも、『ヴェトナム「豊かさ」への夜明け』(岩波新書、1994年)、『ヴェトナム新時代「豊かさ」への模索』(岩波新書、2008年)という一般向けの本もあり、ベトナムに関心のある方々は、近刊予定の書と併せ、ぜひ手に取っていただきたい。 



「大学の研究室での坪井早大教授=高橋伸二氏 撮影」


都心の名門クラブの一室で行われた坪井教授の外務大臣表彰を祝う集まりには、早大の坪井研究室で卒業論文を書いた、現在はキャリアウーマンのOGも駆け付けた。本コラムで筆者と交代で執筆しているテレビ朝日OBの直井謙二氏の長女の二井有紀子さんである。直井氏はこの集まりの席で、「坪井先生には私は取材現場で、娘は大学の恩師として大変お世話になりました」と謝辞を述べられていたが、坪井先生が久しぶりに再会した子育て中で多忙の教え子の近況を盛んに尋ね、目を細めて聞いていた姿に師弟愛のようなものを感じた。



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