1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第473回 貴州省の社会インフラと上海タワー(その5) 伊藤努

記事・コラム一覧

第473回 貴州省の社会インフラと上海タワー(その5) 伊藤努

第473回 貴州省の社会インフラと上海タワー(その5) 伊藤努

第473回 貴州省の社会インフラと上海タワー(その5)

今回の中国取材旅行では、北京、貴州省の省都・貴陽、上海などの都市を駆け足で回ったが、世界第2位の経済大国として目覚ましく発展する中国の大都会の風景から社会主義国と感じるものは、共産党や省・市政府などの公共施設、幹線道路に掲げられている政治スローガンを大書した横断幕の類くらいのものだろう。そして、もう一つあるとすれば、利用すれば分かるのだが、広大な中国全土に路線網がある高速鉄道(中国版新幹線)や大都市の地中を網目状に走る地下鉄の運賃など、公共交通機関の料金の安さだ。

富裕層が利用することの多い航空機の運賃は世界標準のような相場があるので、日本などとあまり変わることはないが、ジャーナリスト訪中団メンバーの事情通によると、高速鉄道や地下鉄の運賃は莫大な建設コストや運用にかかる費用を勘案すると、相当の公的資金を投入して運営企業の赤字を補填しているはずだという。昨年の中国取材旅行では、帰国の際に上海中心部のホテルから地下鉄で1時間ほどかかる上海郊外の上海浦東国際空港まで地下鉄路線を利用したが、運賃はわずか7人民元と日本円にして120円程度で済んだので驚いた。今回の貴州省の視察に際して案内してくれた地元対外友好協会の女性スタッフによると、貴陽からお隣の四川省の省都・成都まで3時間ほどかかる高速鉄道の普通運賃もそれほど高くは設定されておらず、庶民にも利用しやすいとのことだった。

社会主義国としての重要な物差しとなる「平等」という観点から中国各地の高速道路や幹線鉄道網、電力供給といったインフラ(産業基盤)の整備状況をみると、中国は広大な国土を持ちながらも、主要都市間を結ぶ公共交通機関のネットワークはかなり充実しているとの印象を受けた。

貴州省での貧困対策プロジェクトの視察では、省都・貴陽からマイクロバスで片側2車線の高速道路を飛ばし、3時間の距離(170キロ)にある同省南東部の丹塞県までの区間を往復したが、標高1500メートルほどの山々を縫うように走った。途中、長いトンネルや深い谷間を結ぶ長い陸橋を幾つも越えて行ったが、平坦な土地に道路を造るのとは違った数々の難工事の末に高速道路が開通したのではないかと想像した。

利用した高速道路と並行して、遠方に在来路線と高速鉄道の線路も走っているのが見えたが、難工事は車両用の高速道路だけではないわけだ。カルスト状の高原地帯を走るマイクロバスから外を見ると、山々の尾根伝いに送電線をつなぐ鉄塔が点々と連なっており、省内にくまなく電力を供給するためのインフラ整備も怠りない様子が分かった。

貴州省に数日間滞在しただけで、表面を見たにすぎない感想となるが、インフラがかなり整備されているという印象を持ったこの省が中国国内で最も貧しい省の一つにランクされているという指摘がなかなか理解できなかった。

貴州省での現地視察を終え、空路2時間半ほどの距離にある中国最大の商都・上海に到着したが、2400万の人口を擁するこの巨大都市の発展ぶりにはさらに目を見張らされる。市内を流れる揚子江の支流(黄浦江)を挟んで旧市街の西側と新市街の東側を駆け足で見物したが、新市街地の浦東(プートン)にそびえ立つ上海タワー(上海中心大厦=高さ632メートル、128階建て)の118階部分にある展望台から360度の眺望・天空散歩を体験し、世界第2位の経済大国となった隣国の発展と繁栄に圧倒される思いだった。



上海上空。新市街地の浦東(プートン)にそびえ立つ上海タワー(上海中心大厦=高さ632メートル、128階建て)



タグ

全部見る