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第474回 事実上の国家元首スーチー顧問の評価(上)  直井謙二

第474回 事実上の国家元首スーチー顧問の評価(上)  直井謙二

第474回 事実上の国家元首スーチー顧問の評価(上)

ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャが迫害を受けている問題に対するアウンサン・スーチー国家顧問の対応が疑問視され、アムネスティ・インターナショナルが11月、まだ民主化指導者だったスーチー氏に2009年に授与していた賞を撤回すると発表した。スーチー顧問と同様ノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ14世もロヒンギャ問題を巡るスーチー顧問の対応を暗に批判している。

ダライ・ラマ14世は「ビルマ族もチベット族も思いやりを重んじる仏教徒である。ブッダがいたとしたらイスラム教徒のロヒンギャを助けるだろう」と述べた。ダライ・ラマ14世は依然として中国政府から分離主義者として扱われる反権力者である。

一方、スーチー顧問は政権側で軍にも配慮しなくてはならないという立場の違いはあるがスーチー顧問の変貌ぶりは表向き著しい。90年代末、スーチー氏の演説を聞こうと軍の監視をかいくぐって集まっていた市民は現在のスーチー氏をどう受け止めているだろうか。

スーチー氏は自宅前で演説を行っていたが、軍政の圧迫が強まり事前に演説場所を明らかにしなくなった。市民は噂を頼りに軍の目を気にしながら道路でスーチー氏が来るのを待っていた。(写真)立場が変わったこともあるが、スーチー顧問の資質や育ちが影響していることも見逃せない。


1995年7月自宅軟禁を解かれると世界のジャーナリストはスーチー氏の自宅を訪れ軍政に対抗してどう民主化をすすめるかなどインタビューを行った。バンコクに赴任していた筆者もインタビューを申込み、実現する運びとなった。同時に提携関係のあるCNNバンコク支局もインタビューの許可を取っていた。

ミャンマーに出かける寸前、CNNバンコク支局のT支局長が共同取材を申し込んできた。カメラはそれぞれ1台しか持ち込めない。共同取材すれば双方とも2台のカメラでインタビューできるので質問中の記者も撮影できるなど細かい映像取材ができるというのだ。提案の趣旨には賛同できたが最初に筆者がインタビューするという条件を付けた。英語が堪能なスーチー氏にアメリカ人のCNNの記者が先にインタビューすれば根こそぎスーチー氏の発言を持っていかれてしまうことを懸念した。地引網で洗いざらい魚を取った海岸で釣りをするようなもので、筆者のインタビューは粗末なものになってしまうからだ。T支局長とはゴルフや食事を通して親しかったこともあって筆者の条件を快く了解した。

 

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