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第129回 ミャンマー産ワインのお味は? 伊藤努

第129回 ミャンマー産ワインのお味は? 伊藤努

第129回 ミャンマー産ワインのお味は?

東南アジア駐在時代の話だから、もう十数年前のことになる。ミャンマー(ビルマ)の民主化運動の取材で当時の首都ヤンゴンにバンコクから出張した折、半日ほど自由な時間が取れたので、同国に進出していた日本の大手商社の事務所を訪ね、所長さんの話を聞いたことがある。この商社が政情不安や西側の経済制裁などであまりビジネスチャンスもないと思われるミャンマーでどんな仕事をしているのか知りたかったのが、取材で訪れた理由だったが、意外なことにヤンゴン郊外に広大な土地を借り、野菜栽培の技術指導をしていることが分かった。

ゆくゆくは地元農民に生産を任せ、ミャンマーの国内外に販路を開拓するというのがビジネスの内容だったが、この企業戦略がその後、軌道に乗ったのかどうかは、筆者の怠惰で確認はしていない。ただ、軍政が長く続き、経済が停滞したミャンマーとは対照的に、隣国のタイでは、この大手商社と同様の業務分野に乗り出し、かなりの成果を上げていることはよく知られる。日本のスーパーマーケットなどではオクラやエビといったタイ産の農産物、水産物が売られているのが何よりの証左だろう。

そんなことがふと脳裏をよぎった最近、「ミャンマーの農業・食品加工産業の可能性」をテーマにした講演を聞く機会があった。ジェトロ専門家のA講師の結論は、カッコ付きの「民政移管」を果たしたミャンマー新政府が農業・農村政策を最優先の課題に掲げ、食品加工産業の集積も図られつつあるので、そうした分野で技術力のある日本企業の商機は大きいというものだった。長い雌伏の時期が続いたかもしれないが、冒頭の大手商社は先見の明があったということだろう。

講演を聞いていて興味をそそられたのは、ミャンマー北東部に広がるシャン高原では、外国資本による大規模な野菜・果実の栽培が行われているほか、何と、ドイツ系、フランス系の経営者がワイン生産でしのぎを削っているという話だった。赤い山が社名の「レッド・マウンテン」とミャンマーのブドウ園の名を冠する「ミャンマー・ビネヤード」の両社がほぼ十数年前ごろから、ブドウの苗木を欧州から取り寄せ、栽培とワイン生産に乗り出し、販路が拡大しつつあるという。前者の年間ワイン生産量はボトルにして10万本、後者は6万本と、この国の小さなワイン市場を二分する「独仏の戦い」だ。大半は大都市のヤンゴンやマンダレーの富裕層、高級レストランで消費されるとのことだが、ワイン好きにとっては、欧州産の苗木が遠く離れたアジアの地でどんなワインの味になったのかは興味津々かもしれない。

ちなみに、隣国のタイで生産されるワインは赤、白ともなかなかの味で、バンコク駐在の日本人ビジネスマンには珍重されている。ワイン生産もグローバル化している。

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