第127回 「会議は踊る」のASEAN 伊藤努

第127回 「会議は踊る」のASEAN
先ごろ、日本政府は東南アジア諸国連合(ASEAN)の中央事務局があるインドネシアのジャカルタに日本政府代表部を開設した。域外国では米国に次いで2カ国目で、日本のASEAN重視姿勢の表れでもある。日本とASEANの関係と言えば、今年、設立30周年を迎えた国際機関「日本アセアンセンター」の本部は東京にある。経済、文化、観光といった分野を中心に日本と東南アジア諸国の関係は近年、ますます緊密さを増しているが、相手国側の窓口的な存在が加盟国を束ねるASEANだ。
口が2億3000万人のインドネシアを除けば、中小国の寄り合い所帯であるASEANは対外的に存在感、影響力を高める手段として、関係の深い域外の国々との対話に熱心だ。ASEANが主導したり、深く関わったりしてつくった対話の枠組みや組織は数え切れないほどあると表現したら言い過ぎか。

新聞によく掲載されるASEAN外相会議でのお決まりのシーン
このように、国際化戦略には極めて熱心なASEANだが、域内の加盟国同士の紛争や政治的対立には当事者能力を発揮できず、地域協力機構としての限界を露呈する。昨年来再燃したタイとカンボジアの国境紛争に対して、ASEANとしての調停が暗礁に乗り上げているのが好例だ。「会議は踊る、されど進まず」の19世紀欧州外交史の故事を思い出す。