1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第216回 タイ乾季の風物詩「ネズミ捕り大会」 直井謙二

記事・コラム一覧

第216回 タイ乾季の風物詩「ネズミ捕り大会」 直井謙二

第216回 タイ乾季の風物詩「ネズミ捕り大会」 直井謙二

第216回 タイ乾季の風物詩「ネズミ捕り大会」

野ネズミを駆除しようとヘビを放し、田んぼの周りに電線をはり高圧電流を流すなどの対策が取られたが、成果はあまり上がらなかった。最近はあまり見かけなくなった乾季の終わりの4月末頃行われる昔ながらの「ネズミ捕り大会」が野ネズミ駆除には有効なようだ。

自治体が提供する農機具や高品質な肥料などの賞品を目指して村ごとにネズミの捕獲数を競う。稲の豊作と賞品を目指し、大会を前に村ごとに作戦会議が開かれる。村中に全員集合を呼びかける鐘の音が響き渡り、三々五々村人が公民館に集まってくる。「猫いらず」の作り方や「ネズミ捕り」の改良を巡って激しく真剣な討論が続く。

 南国タイでは死んだネズミはすぐに腐敗してしまう。「ネズミ捕り」で捕獲したネズミは尻尾を切り取り、数えやすいように10本ずつ束にし、残りは直ちに焼却する。

第248回 直井.jpg

「猫いらず」や「ネズミ捕り」より人気があるのは「ネズミ狩り」だ。イギリスのキツネ狩りのようにネズミ狩りには数頭のイヌが同行する。村人はクワやスコップそれに長い棒を持って雨季前の干上がった田んぼに集合する。村人が木の枝を長い棒でつついている。しばらくすると2匹のネズミが木から落ちてきた。逃げるネズミをイヌが追いかけて行った。別のイヌは激しく吠えながら、地面をひっかいている。村人はイヌがひっかいた場所をすかさずスコップやクワを使って掘り起こす。

うまくネズミの巣に当たると大きなネズミから生まれたばかりの小さなネズミまで20匹ほどが地面から飛び出してくる。イヌがネズミ追いまわし、長靴をはいた村人がネズミの尻尾を踏む。村人はネズミの尻尾の先をつかみ、ヘリコプターの羽のようにネズミをぐるぐる回す。窮鼠猫をかむと言うが、重い頭が外側を回るのでネズミは尻尾をつかんでいる村人の手をかむことが出来ない。目がすっかり回ったところでネズミの頭を農機具や石に叩きつけ、尻尾を切り取る。(写真)表彰式会場には村ごとに捕獲したネズミの尻尾が入った麻袋が持ち込まれ、尻尾の数がチェックされる。各村ともおよそ1万匹で接戦となり、準優勝そして優勝と村の名前が呼ばれるたびに大きな拍手と歓声がわく。こうして全村あわせて合計でおよそ20万匹のネズミが駆除された。「ネズミ捕り大会」が終わるとまもなく雨季を迎え、田植えが始まる季節になる。


写真1:ネズミの捕獲を喜ぶタイの農民

《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
《アジアの今昔・未来 直井謙二》次回
《アジアの今昔・未来 直井謙二》の記事一覧

 

タグ

全部見る