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第503回 ライトアップされた重慶の夜景に驚嘆 伊藤努

第503回 ライトアップされた重慶の夜景に驚嘆 伊藤努

第503回 ライトアップされた重慶の夜景に驚嘆

中国内陸部にある重慶は、長江(揚子江)とその支流の嘉陵江が合流する地点にできた大きな中洲を中心に発展した都市で、周囲を小高い山々に囲まれている地形のため、「山城」の別名があることはすでに紹介した。中洲といってもかなりの大きさで、現在は渝中区となっているこの重慶中心部には、直轄市の重慶を統治する荘厳なつくりの市政府や議会の建物をはじめとする地元行政機関、人民広場、重慶中国三峡博物館、船着き場のある朝天門広場、日中戦争時代に中国共産党の拠点として使用された周公館(後に建国された新中国で首相となった周恩来氏が共産党中央南方局の事務所を構えたため、こうした呼び名となった)といった観光スポットが多くある。日中戦争中には、中洲の長江河岸に米軍が使用していた軍用機用の滑走路があったことからも、大きな川中島であることが分かる。

ただ、古くから町の中心として栄えた渝中区は面積も限られているため、町は嘉陵江北岸の江北区や渝北区などの周辺部に広がっている。また、渝中区とその周辺部を結ぶため、幹線道路・鉄道・ロープウェーといった公共交通網の整備が進んでおり、市内へのアクセスは便利だが、急ピッチな都市開発と居住人口の増加に伴い、幹線道路での渋滞も増えているようだ。

さて、重慶に到着した後、地元の人民対外友好協会主催の歓迎夕食会を済ませ、すっかり夜となった川沿いのレストランの外に出てみると、重慶の二つの大河の河岸から山の中腹にかけて林立する高層ビルや長江に架かる大きな橋などがカラフルな照明でライトアップされ、見事な夜景をつくり出していることに一同が驚かされた。筆者らの中国視察団一行の何人かは、中国駐在の特派員や勤務先から派遣された語学留学生として重慶を訪れた経験をお持ちで、30年前、20年前といったかなり以前の体験や見聞ながら、「当時は夜になると、重慶市内は真っ暗で、宿泊先のホテルまで坂道を歩くのが大変でした」などと昔の思い出を口々に語っていた。ちょうど、重慶に滞在していたのと同じ時期、中国南部にある国際金融都市の香港では民主化を求める若者らの抗議活動が続いていたが、重慶の夜景は香港の「100万ドルの夜景」にも劣らないのではないかと思ったほどだ。

私たち一行のメンバーの昔話や夜景の感想を耳にした重慶市人民対外友好協会の女性スタッフのJさんが翌日、職場の上司の許可を取った上で、筆者ら一行にサプライズとなる予定になかった日程を加えてくれたのだった。近年の重慶における観光名物となった川の上から重慶の多彩なライトアップを眺める夜景クルージングへの招待である。

重慶の人民対外友好協会幹部が主催してくれた公式の歓迎宴を終え、長江と嘉陵江を短時間クルージングする大型遊覧船が停泊する長江の桟橋へと急いだ。驚いたのは、桟橋近くの道路には大きな観光バスが長い渋滞をつくっており、夜景見学のクルーズ船目当ての中国人の家族やツアー客らでごった返していたことだった。こちらもライトアップされた観光船は2階建てとなっており、上階の甲板に出ると、川風が心地よい。

桟橋を出発した後、二つの大河の合流点である中洲の突端の朝天門広場とそれに隣接する重慶港(埠頭)の前を大きく曲がって嘉陵江に入り、再び川の途中でUターンして桟橋に戻るという1時間の周遊コースだったが、遊覧船の甲板から見る重慶の高層ビルのほとんどすべてがライトアップされた「明かりの芸術」は圧巻だった。多くの高層ビルの長い壁面は、点滅する照明を使った広告塔の役割も果たしており、商魂たくましい大規模照明の仕掛け人が大勢いるのだろう。

こうして、長江とその支流の嘉陵江を短時間周遊するクルージングで、河岸に林立する高層ビルの壁面を巧みに使ったライトアップの見事な夜景を見物したが、長江の下流方向にある歴史や自然、文化で彩られた「三峡」(三峡下りで有名)という世界遺産級の観光資源と併せ、観光産業のさらなる振興も中国内陸の大都市・重慶の魅力を高めることに寄与しよう。

 

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