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第8回 黄金の三角地帯に薬物復活の兆し  直井謙二

第8回 黄金の三角地帯に薬物復活の兆し  直井謙二

第8回 黄金の三角地帯に薬物復活の兆し

学生や角界など、日本でも大麻汚染が深刻な社会問題になっているが、アヘンの生産地として世界的に有名なタイ、ラオスそれにミャンマーの国境地帯でも、再び薬物の問題が深刻化している。アヘンの産地、インドを植民地支配したイギリスが、中国にアヘンを売り込み、阻止しようとする清朝との間でアヘン戦争が起きたのが1840年。そして戦争に敗れた中国ではアヘンが蔓延した。その中国で太平洋戦争後、国民党が共産党との内戦に敗れ、一部がタイとラオスそれにミャンマーの国境地帯の黄金の三角地帯に逃げ込んだ。大陸反攻の資金として国民党はアヘンを栽培したことが、この地方にアヘンが広がった一つの要因になっている。もともと少数民族が多く住むこの地域は山岳部のため、稲作や野菜作りには適していない地形だ。重い農産物を市場まで運ぶ苦労は、大変なものだ。その点、アヘンは運搬も楽で高価に取引できることから、アヘンの栽培、生産に拍車がかかった。

以前取材で訪れたミャンマー国境に接するタイの小さな村では、おばあさんから子供までが、さまざまな薬物を売っていた。客のほとんどは、欧米の若者で、購入した後、近くの川原で吸引している姿を目にしたこともある。このような状況に対して、欧米諸国も当然神経を尖らせている。タイとアメリカなどが参加して行われる合同軍事演習コブラ・ゴールドは、ベトナム戦争以後共産主義の広まりを食い止める目的で始まった演習だが、最近は薬物の押収など訓練の内容が変わってきている。もはやタイの脅威は薬物だ。

一方、タイの王室を中心にアヘンの栽培をやめさせ、ジャガイモやニンジンなどの野菜の栽培を勧めるキャンペーンが行われ、一定の効果を上げている。隣国、ミャンマー軍事政権も薬物の取り締まりを強化している。

民主化が進まないことで欧米各国から経済制裁を受けるミャンマーだが、薬物を取り締まることで欧米との妥協を図ろうという狙いがあり、定期的に西側記者を入国させて、薬物を焼却する様子を取材させている。(写真)


ところが最近、薬物の取り締まりの中心的役割を果たしてきたタイで再び薬物の汚染が広がってきている。無実の市民まで殺害したのではないか、と疑念を持たれるほど厳しく薬物を取り締まったタクシン政権が倒れ、政治的混乱や南部のイスラムゲリラの対応に治安部隊が取られてしまい、薬物の取り締まりに手が回らないことなどが指摘されている。経済の立て直しや南部イスラム過激派への対応、さらには薬物の取り締まりと、アピシット政権が直面する課題は山積している。


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