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日本のマナーについて 伊藤孝司(日本語版・4)

日本のマナーについて 伊藤孝司(日本語版・4)

第4回 電話応対にも細かなマナー

中国語と日本語で日本のマナーについて紹介します。(中文版


 私は大学の事務職員として勤めています。

 日本では就職活動を行う際、「リクルートスーツ」と呼ばれる洋服を着る学生が大半を占めます。採用の選考試験や面接が解禁となる6月になると、リクルートスーツを着た学生が大学内の至るところで見られます。

 男子学生は就職活動のシーズンが来ると、それまでのカジュアルな服装を脱ぎ捨て、「リクルートスーツ」に着替え、スニーカーからピカピカの革靴に履き替えます。

 女子はどの学生も、判で押したように黒のパンプスを履き、黒の手提げバッグを持っています。私が大学生だった30年ほど前は今よりももう少し自由だったような気がします。

 あまりにも同じような服装をした女子学生が目立つので、大学生が就職活動で利用するサイトを覗いてみました。そこで、スーツは「黒・紺・グレーのような落ち着いた色のものが一般的」、靴は「つま先が丸いもの」と細かく書かれていました。

 小学校で細かなマナーを教えてきた歴史のある日本。日本人はマナーのマニュアルを読んで実践することが好きな民族なのかもしれません。

 熾烈な就職活動を乗り越えて学生たちはビジネスの最前線に放り出されます。大学の事務局に採用された職員たちを見ていて、彼らがまず苦戦するのは電話のマナーです。無理もありません。「90後」や「00後」の彼らは、物心ついた時に携帯電話があります。今では固定電話がない家庭も珍しくはありません。

 マナーの専門家でもなく、どちらかと言えば自由奔放な社会人生活を送ってきた私ですが、若い職員の電話応対を見ているといくつか気になることがあります。

 携帯電話が普及していない昔、電話というものは誰が受けるのかわからないものでした。例えば、小学生が友達に電話しようと思った場合、相手の家の固定電話に掛ければ、家の人が受けるケースが普通でした。だから、私が幼年期を過ごした1970年代末期、多くの家庭では「私は○○と申しますが、××さんはいらっしゃいますか?」という話し方のマナーを親が子供に教えたものでした。

 一人一台と言っても良いほど携帯電話が普及した今は、誰が電話を受けるのかはっきりしています。ですから、いきなり「××君?」と話し始めても特に問題ありません。

 まず、電話のベルが鳴ったら、速やかに受話器を取ることが必要です。早ければ早いほど良いです。ベルが鳴る回数が多くなるほど、電話の発信者はイライラしてしまいます。

 そして、「●●●●です」と、自分から組織名を名乗ることが必要です。もし、会社の中で特定の部門にある電話機ならば、「●●社××部です」と名乗るのが良いでしょう。

 「電話応対を見れば会社のレベルがわかる」と言われるほど、電話応対には組織の個性が出ます。電話を受けたら受話器を置くその瞬間まで、気を抜いてはいけません。通話を終えて受話器を置く前に、電話機のフックボタンを手で押しましょう。そうすれば、受話器を置く瞬間の「ガチャン」という音が相手に聞こえません。

 電話を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。新型コロナウイルス感染症の流行により、在宅勤務を可能とする会社が増え、スマートフォンが会社の電話機として使えるサービスが普及し始めているようです。職場から従来型の固定電話が消える日も遠くないかもしれません。

 通信手段の進歩は日進月歩ですから、10年後、果たして現在の電話マナーが残っているかどうか全く見通せません。やはり、マナーは「生き物」で変化していくものなのです。


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