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第267回 新聞購読のもう一つの効用 伊藤努

第267回 新聞購読のもう一つの効用 伊藤努

第267回 新聞購読のもう一つの効用

物流業界に長く勤め、その方面に大変詳しい知人から「日本の新聞の宅配制度は物流という点からも世界に誇る仕組みですよ」と聞いたことがある。確かに、人口12千万人前後の国民の半数近くに上る新聞発行部数の大半が毎朝、新聞販売店から購読者の家庭に配達されているのを知っていたので、この指摘にうなづいたのだが、物流専門家の彼が言わんとしていたのは、宅配される新聞と一緒に配られている大量の折り込み広告のことだった。

鉄道会社沿線にある幾つかの百貨店や近くのスーパーマーケットの特売・安売り宣伝から、自動車販売店、マンション販売会社の売り出し広告、人材募集、予備校や塾の宣伝など、折り込み広告が扱う分野・対象は極めて多く、日常生活に密着したものばかりだ。購読する新聞には日本や世界の最新ニュースが満載だが、新聞紙面に掲載の企業などの広告と違うのは地域に根付いた広告情報という点だ。

こうした地域と密着した広告を新聞の折り込みという形で読者に提供できるのは、これを扱う折り込み広告専門の会社と新聞販売店の二人三脚が長く機能し、すっかり定着してきたためだ。冒頭に紹介した物流に詳しい知人が強調したかったのも、日本の新聞業界で独自に発展を遂げてきたこの仕組みのことだったのである。

確かに新聞紙面に掲載されているニュースを読むことが購読の主たる理由だが、それに付随する地域の広告情報、言い換えれば生活や買い物情報の提供というサービスを利用しないのももったいない。

この4月から消費税がこれまでの5%から8%に引き上げられたが、増税分の出費の増加は折り込み広告の安売り広告を上手に利用すれば、お釣りが出るくらいの効果があるのではないか。家計を預かり、日々、食料や日常雑貨の買い物を担当する家庭の主婦といった人たちにとっては、出費を抑える家計防衛上、折り込み広告は強い味方になるのは請け合いだ。

新聞の月額購読料金は3,000円から4,000円前後というのが相場で、一日当たりの平均は100円から140円の出費ということになる。折り込み広告を含め、新聞の広告を上手に活用すれば、新聞購読料あるいはそれ以上の額を取り戻せるのではないか。毎朝夕、天気が悪い日でも確実に新聞を手にできる宅配制度の恩恵を感じながら、日々お世話になっている新聞販売店の応援をさせてもらった。


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