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第16回 12の滝と奇岩が織りなす渓谷美 内延山 森正哲央

第16回 12の滝と奇岩が織りなす渓谷美 内延山 森正哲央

第16回 12の滝と奇岩が織りなす渓谷美 内延山

暑い夏に最適ということで、今回は涼しい渓谷の散策が楽しめる慶尚北道の内延山を紹介したい。浦項の北30キロ、日本海から6キロに位置する内延山は、“慶北の金鋼山”と呼ばれる観光地で、南麓の清河谷(甲川渓谷)には、大小12の滝をはじめ、岩窟や奇岩怪石が渓谷美を織り成し、四季折々の風景を求めて多くの探訪客が訪れる。1983年、渓谷入口の古刹宝鏡寺にちなみ、盈徳郡から宝鏡寺郡立公園に指定された。内延山は、主峰の三枝峰(710m)を中心として、清河谷を囲繞するように東に文殊山(622m)、西に香爐峰(930m)、南に毎峰(816m)、サッカッ峰(716m)、牛背峰(天嶺山・755m)がつらなり、女性的ななだらかな山勢をしている。今回は、三枝峰を経て香爐峰まで縦走、時明里から宝鏡寺まで戻る、尾根歩きと渓谷美の両方を楽しめるコースを歩いてみた。

浦項から市外バスに乗って1時間余り、終点の駐車場で下車する。宝鏡寺へ向かう車道両側には食堂、土産物が軒を連ね、民泊(民宿)の看板も多い。車道を行くと“鮮脱門”と山号額が掲げられた宝鏡寺の山門が見えてくる。宝鏡寺の名は、602年に秦から帰国した智明法師が、中国から持ち帰った仏経と八面宝鏡を埋めて創建したことに由来する。大雄殿の裏に立つ高麗の高僧、円真国師(1172~1221)の碑石(宝物)などぐるっと見て回り、甘露水を水筒に汲んだら甲川沿いの小道へと進む。

コンクリートの細道からやがて砂利道になり、山神を祀る内延山山王大神之位と姑母堂神之位の前を過ぎる。その先の分岐を右折、沢を離れて山腹にとりつく。しばらく登ると、樹間から眼下に、第一の滝とも呼ばれる相生瀑布が望めた。文殊庵を経て尾根に出るまでが最もきつい。尾根にでたら、文殊峰まではひと踏ん張り。山頂は樹林に囲まれ、浦項の山岳会が建立した頂上標識碑の後ろに、各地の山岳会が結わえた色とりどりのリボンがヒラヒラと風に揺れていた。この先、最高峰の香爐峰までは、樹林の尾根で、展望が得られないので少し単調に感じる。香爐峰の山頂には“内延山 香爐峰”と刻まれた石碑が建ち、曇ってはいるが、緑濃い周囲の山並みが望めた。晴れていれば浦項市街まで見える。この日、初めて登山客と会った。

尾根歩きはここまで、後は清河谷(甲川渓谷)へと下る。時明里三叉路(400m)を過ぎると、次々に滝が現れる。だが時明瀑布(第9の滝)は150m、シル瀑布は300m、伏虎1瀑布(第10の滝)は80m、それぞれ山道から外れ、脇道に入らないといけないので、疲れた身体には少々こたえる。隠瀑布(第8の滝)より下流の滝は山道から望める。三叉路から約1時間45分で、清河谷12瀑布を代表する延山瀑布(第7の滝)と観音瀑布(第6の滝)までおりてきた。

延山瀑布は、朝鮮中期の儒学者、丁時翰(1625~1707)の『山中日記』に“内延瀑布”と紹介されており、いつしか内延山の「内」をとって呼ぶようになった。吊橋を渡ると、鶴巣台と呼ばれる崖下に、40mにわたって勢いよく水が流れ落ちる迫力は十分。延山瀑布を過ぎると歩きやすくなり、普賢瀑布(第2の滝)、相生瀑布を過ぎ、宝鏡寺へと戻る。帰途へつく前に、宝鏡寺山門そばの延山ミネラル温泉パークで汗を流してもよい。2003年にオープンした施設で、山行帰りに寄っていく人も多いようだ。

●アクセス(バス)
・浦項市内~宝鏡寺 浦項バスターミナル前から510番バス乗車。1時間所要

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