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第15回 嶺南アルプスの盟主 迦智山 森正哲央

第15回 嶺南アルプスの盟主 迦智山 森正哲央

第15回 嶺南アルプスの盟主 迦智山

昨年の9月に紹介した神仏山に続いて、今回も嶺南アルプス7峰の一つ、迦智山(加智山・1240m)を取り上げたい。迦智山は嶺南アルプスの最高峰で、慶尚南・北道の境界に位置する。南麓には比丘尼(尼)の修行場・石南寺もあって、蔚山を代表する山として多くの市民に親しまれている。蔚州郡上北面と密陽市山内面にまたがる地域は1979年に迦智山道立公園に、北の慶尚北道清道郡雲門面側は1983年、雲門山郡立公園に指定されている。今回は、徳峴里の石南寺から東の尾根を経て山頂に登り、迦智山から陵洞山(982m)へ抜ける稜線を経て、石南峠から再び徳峴里に戻った。ちなみに「嶺南アルプス」の名は、日本アルプスに倣い、1970年代に名づけられたものだ。

蔚山市街から1713番バスに乗車、彦陽の街を経由して終点の石南寺で下りる。彦陽を過ぎると右手に高献山(1033m)が迫る。迦智山は、さらにその先、太和江によってできた沖積平野の最奥に鎮座する。石南寺駐車場で下車、あらためて迦智山を仰ぐと、青空を背景に右手に白く見える米岩から山頂へ、しだいに高度を増す山の背がひときわ高い。嶺南アルプスの盟主にふさわしい山容に、登高欲をそそられる。


迦智山南麓の石南寺は、道義国師が824年に創建した。道義国師の遺骨をおさめた舎利塔、蔚州石南寺僧塔が宝物に指定されている。山門からお堂までは約600m、樹木に囲まれた緑の参道が真っ直ぐのびている。徳峴川にかかる青雲橋を渡り、寺の裏山へ進んでいく。薄暗い松林を上ること1時間余り、標高760m地点で雲門嶺から米岩へ続く林道にでる。この後は林道を何度も横切りながらの登りとなり、耳岩まで来ると、すばらしい展望が広がった。東へ延びているのは密陽市に抜ける国道24号線。南西には山頂へと続く稜線が延び、北には清道郡雲門面の文福山(1014m)、翁江山(832m)がひかえている。先に来て休んでいた男性から声をかけられる。蔚山市東区から来たという金さんで、この後、下山するまで一緒に歩くことになった。


上りがきついのは上雲山まで。その後はところどころ露岩を通るものの、全体としてなだらかな尾根道がつづく。耳岩すぐ裏の上雲山(1114m)を過ぎ、小ピークを巻いて石南寺の駐車場から見えた米岩(1109m)へ。米岩待避所があり、ラーメンやコーヒーのほか、ビールや焼酎も置いていた。米岩は、蔚山市街を流れ日本海に注ぐ太和江の源流に認定されており、欲のため身を滅ぼす愚かさを諭した「米岩説話」が伝わっている。下の水場でマクワウリを洗い、皮ごとかぶりつく。渇いた喉にひときわ瑞々しい。


米岩を後にし、天然記念物にも指定されたツツジの群生地を過ぎる。最後に木の階段をひと登りすれば、尖った岩の山頂にでる。登山口から見上げた迦智山は手強そうな山に見えたが、思ったよりもすんなりと登れたので拍子抜けした。あいにくの霧で展望は得られない。山頂すぐ下には売店もある。


山頂からは洞陵山へと続く尾根を下り、石南寺峠から尾根を離れ、2時間余りで石南寺の駐車場に戻る。金さんによると、徳峴里に下らず、石南峠から洞陵山(983m)、天皇山(1189m)へ抜けるか、山頂から西の尾根を雲門山(1195m)へ縦走すると、さらに多様な山行が楽しめらしい。金さんと駐車場で一緒にアイスを食べた後、再会を約し、握手して別れた。

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