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第471回 アルコールご法度の歓迎宴を貴州省で初体験(その4) 伊藤努

第471回 アルコールご法度の歓迎宴を貴州省で初体験(その4) 伊藤努

第471回 アルコールご法度の歓迎宴を貴州省で初体験(その4)

筆者にとって、中日友好協会の日本人ジャーナリスト招請プログラムによる中国の現地取材参加は今回で5回目となったが、初めて参加した2010年以降、1~2年おきに中国の各地を訪れて世界第2位の経済大国となったこの隣国の発展ぶりには驚かされることばかりだ。人口が2000万人を超える北京や上海といった大都会ばかりでなく、地方の省・直轄市の省都などは「どこかの国の首都」とみがまうばかりの現代的高層ビルの林立で、若者ら人々の生活ぶりも消費スタイルの変化やスマートフォンの普及などを見る限り、年々豊かになっている印象だ。そうした中で、今回の訪中取材でちょっとした変化があり、筆者ら一行が驚いたことがあったので、紹介したい。

国力が向上する中国の象徴的イベントだった上海万博や北京五輪を無事開催した後の2012年に発足した現在の習近平指導部が党幹部らの汚職・腐敗の追放を錦の御旗に掲げ、中央や地方の腐敗幹部を徹底的に摘発する一方、党幹部や政府役人に対して派手な宴会などは自粛する通達を出していることはよく知られている。現指導部は昨年10月に2期目に入り、高級レストランを使って酒食をもてなす宴会などの自粛が続いていたはずだが、その影響の一端を今回の訪中期間中に初めて体験することになった。

この訪中取材では毎回、地方都市への視察がプログラムに組み込まれており、地方では招請団体の中日友好協会と緊密な関係のある地元省・市当局の対外友好協会の責任者が主催する歓迎夕食会に招かれることが慣例となっている。今回訪れた貴州省の省都・貴陽でも現地滞在中に2夜連続でこうした歓迎宴があったのだが、いずれもビールなどのアルコール類はご法度ということで、ジュースなどのソフトドリンクが供された。

貴州省では、貧困対策支援事業の現地視察で長い時間をかけて地方に車で向かい、視察先のレストランで地元幹部らと昼食を取った際にもアルコール抜きということで、訪中団一行の一部メンバーの発案で、招待側の了解を得た上でビールを注文し、「中国料理にはビールがなくてはならない」などという勝手な理屈を付け、「難」(?)を逃れた。このようなケースでは、郷に入れば郷に従え、ということわざもあるが、日中、炎天下で長時間の視察をこなした後とあって、どうしても冷たいビールで喉を潤したいというのが「酒飲み(飲んべー)の勝手な論理」で、誘惑に勝てなかったわけだ。

貴陽の滞在2日目の夜に催された貴州省政府対外友好協会主催の歓迎宴は、会場が省政府の職員用施設だったため、食堂は併設されていてもアルコールの準備はもともとなされていないという説明があり、訪中団一行の酒飲みメンバーの期待は結局かなわなかった。テーブルに並べられたおいしい地元料理もかなり残ってしまったようだった。この歓迎宴を主催した女性幹部は、貴州省は経済的に貧しい省といわれていることもあり、省の幹部は中央からの通達を厳しく守ることを決め、宴会ではアルコール類を出さないということを率先垂範しているとのことだった。

アルコール好きの多いわが訪中団一行に先方の女性幹部はややあきれた様子だったが、ビールにありつけなかったメンバーの何人かはその夜、宿泊先のホテルからほど近い高級ホテル内にあるドイツ資本のビアホールに繰り出し、大きなジョッキをあおったのだった。



中国の対外友好協会が催した歓迎宴のひとこま。



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