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チャイナ・スクランブル

世界覇権姿勢露わにした中国に、インド、欧州が一帯一路、5G建設で反発強める(中)
2020-08-17. 日暮高則
<欧州>
欧州では、東欧諸国を中心とした域内後進国が一帯一路やAIIBに前向きに取り組んできた。特に、自国に大型プロジェクトを持ちながら、建設資金が調達できないような国では期待感は高まった。しかし、スリランカのハンバントタ港や、近くではコスコグループ(遠洋海運集団)によるギリシャ・ピレウス港の租借権益確保の現実を見せられ、欧州各国も徐々に中国の投資への懸念を増していった。長い間ソ連領の一部であって、大国の”パフォーマンス“を知り尽くしているバルト三国はとりわけ警戒感が強い。中国は一帯一路でアジアと欧州を結ぶ結節点と考え、接近を図ってきたが、三国は最近、それぞれが政府報告を出し、「中国はロシアとともに主要な脅威である」と指摘し、中国への友好的なすり寄りに対し、拒否の姿勢を見せている。

エストニアはバルト三国の中でも最北端にあり、ロシアを挟んでいわば中国に一番近い位置にある。このため、中国はEU諸国への輸出拠点、つまり物流の要衝としてずっと狙いを定めていたようで、これまでも多くの中国企業が進出し、友好関係を築いてきた。中鉄国際集団、中国鉄路行程集団公司、交通建設公司がエストニアの実業家に首都タリンからフィンランド湾をまたいでフィンランドのヘルシンキに至る約100キロに海底トンネルを掘り、鉄道や高速道路でつなぐ壮大な計画を持ち掛けていた。だが、ヤーク・アーブ地域発展担当相は8月1日に声明を出し、「安全性を考えて、我が国政府は中国出資の海底トンネル建設プロジェクトは受け入れられない」と拒否した。

安全性の意味は、単に借款の返済不能に陥り、将来中国側に権益が奪われるという心配ばかりではない。同国最大野党改革党のカヤ・カラス党首は7月下旬、「中国が新疆ウイグル自治区で行っているウイグル人への扱いは、かつてのナチスドイツのユダヤ人虐待と同じだ」と非難するように、同国政界に中国現政権への不信感があることが背景にある。元欧州議会議員でもあるカラス氏は「EU諸国の中国対応がバラバラであるので、早期に統一規定を作り、中国企業がEUで活動するのを阻止しなければならない」と強調する。改革党は政権への影響力を持っており、エストニアは今度、中国との経済関係拡大に後ろ向きになりそうだ。

リトアニアは、バルト海に面した同国唯一の港湾クライペダ港の拡張整備を計画していた。ただ、総工事費が8億ユーロと巨額であるため、躊躇していたところ、中国企業が投資を申し入れてきた。当初政府はこの投資話に乗ったが、昨年誕生したギタナス・ナウセーダ大統領がやはり「安全上の問題がある」として計画を中止した。同国の政府報告書は「中国は我が国政府の役人、学者、国防関係者、さらには専門領域の人を情報提供者としてリクルートしている」と指摘し、不信感を露わにしている。ラトビアも「中国は、ロシアと並んで国家防衛上、脅威に感じる」との政府報告書を出している。

ルーマニアは、ポーランド、ブルガリア、スロバキアなどと同様に、鉄道、高速道路、運河・水利施設など国内ビッグプロジェクトに対して、一帯一路による中国の投資、建設参画に期待していた。その最大のプロジェクトが原発建設で、ルーマニア国営原発企業(SNN)は2015年、中国広核集団(CGN)との間で原発2基を黒海沿岸の都市コンスタンツァに建設することで合意していた。だが、今年6月、ルーマニア政府はこの契約を破棄したことを明らかにした。ビルジル・ダニエル・ポペスク経済相はその理由について、「昨年結ばれた原発施設の建設、運営の企業合弁案によれば、株式所有が中国側51%、ルーマニア側49%になっていた」と述べ、事実上、経営権の喪失に不満であったことをほのめかした。

理由はそれだけでない。米国で華人系技師が2016年、原子力関係の機密技術を窃取したことで訴追されたが、その技師がCGNのコンサルタントをしていることが分かった。このため米国エネルギー省は18年、中国に対する原子力機器と技術の輸出規制強化を決め、CGNも禁輸措置対象リストに加えたこともあった。ルーマニアは対ロシア防衛のため、米軍と緊密な関係を保持しており、機嫌を損ねたくないとの考えたのであろう。さらに、EU本部が最近、中国投資に不信感を持ち、「中国の債務の罠に落ち込まないように」とのお触れを出したことも影響しているようだ。破棄に対し、中国商務部は「ルーマニアは一帯一路の重要な参画者であり、大きな力になることができたのに」と残念がった。この反応から、中国がルーマニアを突破口としてEU内の原子力市場に入り込むことを意図していたことが読み取れる。

欧州の主要先進国はどうか。英国のキャメロン元首相や、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相は一帯一路、AIIBへの関与に前向きだった。国内財政が芳しくない南欧諸国では、スペインは他のEUの動向に従うとして、一帯一路の協力に関する協定覚書にサインしていないが、ポルトガルやギリシャはすでに調印済み。イタリアは昨年、ジェノバ港の整備やエネルギー開発で資金が必要なことからG7国家として初めて中国と覚書を交わした。ところが、今年、中国が新型コロナウイルスの原発生地であることが分かり、さらに南シナ海などでの覇権的行動、香港の国家安全法の適用を見て、自由と人権を重視する欧州先進国も中国との経済的な連携に疑問を持ち始めた。特に、アングロサクソン国家群のファイブアイズ5カ国同盟を重視するジョンソン首相が登場し英国が激変。フランス、ドイツも動きが鈍くなった。

国内の5G建設に関しても、英国がファイブアイズの連携からファーウェイを拒否、フランスも前向きから一転して拒否の姿勢に変わった。ドイツは、メルケル首相がファーウェイ導入に前向きだと言われ、依然態度を変えていないが、同国外務省のミカエル・ロト欧州事務担当部長は週刊誌「シュピーゲル」最新号への投稿で、「中国は重要な協力の相手であるが、競争の相手でもある。EU各国が中国に対する時には足並みをそろえる必要がある」「香港の現情勢を見ると、中国の権力拡張姿勢がはっきりと見える。同国自身への経済への依存を権力政治の道具にしている。だから、EUは自らの経済力を強め、欧州の価値と利益を守って行かなくてはならない」と主張した。中国との経済提携の危険性をほのめかし、EUの結束を図っていく必要性を強調したものだ。ドイツもあるいは最後に英仏に同調し、ファーウェイ排除に動く可能性もありそうだ。