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11月末の台湾、香港2つの選挙で統一派、親中国系が勝利−でも浮かれぬ北京当局(上)
2018-12-12. 日暮高則
11月最後の週末、台湾で市・県の首長、議員を選出する九合一地方選挙と、香港で立法会(特別行政区議会)議員を選ぶ補選が実施された。筆者はこの時期、香港にいて両選挙の成り行きを身近で見守ることができた。台湾選挙の結果は、民進党地盤の高雄市で国民党候補が選出されるなど全般的に統一派のブルー陣営が勝利し、「台湾は一夜にして緑(民進党カラー)地から藍天に変わった」と言われるほどになった。蔡英文総統は責任を取って、民進党主席を辞した。一方、香港立法会の九龍西選挙区補選では、親中国系の女性候補が著名な民主派の2人の候補を破った。中国は米国に貿易戦争を仕掛けられて四苦八苦している最中だけに、この勝利は中国当局を勇気づけるものとなったはずだ。だが、北京からは派手な喜びの反応は見られなかった。

24日投開票となった台湾の地方選挙は、香港でテレビや新聞を通して動きを見守った。最終的に22市・県長選挙で民進党が勝利したのは6市・県だった。前回選挙に比べて7つの首長が国民党などに奪われた。民進党の総得票数は489万7730票で、得票率39・16%。これに対し、国民党は610万2876票の48・79%で、得票率は10ポイントも引き離されている。直轄市である台北、新北、桃園、台中、台湾、高雄6都市の市長選挙を見ると、民進党候補が勝ったのは桃園と台南だけ。前回勝利した台中、高雄は国民党に奪われた。それも両都市とも接戦でなく、国民党が有効投票の5割半ばを制したのに比べ、民進党は40%台前半の得票率でしかなく、惨敗だった。

台中市は国民党候補の盧秀燕女史(57)が勝った。ここはもともと、政府駐米代表や外交部長を歴任した大物、胡志強氏が2期にわたり市長の座にあった国民党の地盤。前回、民進党の林佳龍氏(54)に首長の座を奪われたが、今回は雪辱した。盧女史は政治大学出身で元中華テレビの記者。政治の道を志し、旧台湾省議員から立法議員(国会議員)に上り、4期にわたりその職にあった。「台中市長を奪回すれが、九合一選挙全体で弾みがつく」とばかりに、国民党は早くから呉敦義、馬英九の新旧党主席を送り込み、後押しした。その結果、事前の世論調査でも盧女史の人気度は林候補を上回っていた。林佳龍市長は、在任中に600億台湾元以上の巨額の起債をしたり、東アジアユース競技大会の誘致に失敗したりしたことのマイナスイメージを吹っ切れなかった。

台北市長選は、台湾大医学院元教授で無所属の柯文哲候補〈59〉が連続当選を果たした。4年前の選挙で、柯氏は「私は藍でもなく緑でもなく、白だ」と言って党派性のなさを強調した。国民党が連戦名誉主席の長男連勝文氏を候補者として決定していたことから、もともと同市では劣勢で、単独では勝てないと分かっていた民進党は対抗上、柯氏を便乗応援した。しかし、柯氏は当選後民進党にはなびかず、大陸と交流を進めるなど独自の動きをしてきた。このため、民進党は今回、姚文智(53)という独自候補を立てたが、投票率17・29%で惨敗した。むしろ国民党の丁守中候補〈64〉が40・82%の票を取り、41・05%の柯氏に3000票差まで肉薄している。また、国民党の地盤である新北市でも、民進党は、蘇貞昌という行政院長〈首相〉や党主席も務めた大物を擁したが、これも大差で敗れ去っている。

▼民進党地盤の高雄も国民党勝利
今回最も注目を集めた選挙区は、南部の中心地高雄市だ。現総統府秘書長で肝っ玉かあさん風の女性陳菊さんが長く市長を務めた民進党の金城湯池。それだけに、同党としても負けられないところだが、そこに韓国瑜〈62〉という異色の国民党候補が立った。旧台北県(現新北市)の外省人軍人家庭で育ち、軍学校に通った。旧台北県議員から立法院議員となり、3期務めたあと、台北農産運銷(運送販売)公司の総経理(社長)に転じるなどの変わり種。高雄には縁がない、いわば落下傘候補だ。見た目は禿げ頭で風采が上がらない初老男だが、本人はそれを気にするどころが、逆に親しみを感じさせる自分の個性として売り出した。現地市民も「韓国瑜」という名前から彼を韓国ドラマと関連付けて「韓流」と呼び、受け入れて行った。

韓氏は、土地柄を意識して特に民進党との対抗姿勢を見せず、統一色も示さなかった。選挙戦で強調してきたのは、農業振興を中心とした現地の経済再生策。党派性を強く示さないところは、台北市の無所属候補柯文哲氏を強く意識したものだ。民進党側は「韓候補は大陸に支援されている」と吹聴したが、影響はなかった。結果は、民進党の陳其邁候補〈53〉を15万票ほど上回る89万2545票を獲得して当選した。柯文哲、韓国瑜両氏の当選について、台湾の評論家は「もう藍や緑だという政党色を打ち出す時代ではないのかも知れない」と指摘。中国人民大学国際關係学院の黄嘉樹教授は「政党の目線から一番遠い存在である人が政界に出てきて、短期間で熱狂的な支持を得た。これは第三勢力が今後絶えず台湾の政界に登場し、うねりを起こすことを物語る」と分析している。

だが、当の韓国瑜氏は当選後の記者会見で、無党派性から一転国民党色を明示。92年コンセンサス(一つの中国を前提とする)を認めると宣言し、「両岸工作小組」なる組織も設立した。そして、「工作小組は高雄を海外に向けて発展させ、若者に良好な就業機会を与えるものだ。両岸関係には垣根はなく、道があるだけ」と述べ、大陸との経済関係を積極的に進める考えを打ち出した。民進党の蔡総統不人気の中で、2年後の総統選挙を意識した発言なのかも知れない。現国民党主席の呉敦義氏は70歳という高齢に加え、それほど大衆人気がないことから、次期総統選に出る可能性は極めて薄い。であれば、昨年の同党主席選挙にも出馬した韓氏に野心がないわけはない。今後、高雄市政での働きをアピールしながら全国民党支持層の期待を集めて、総統へのステップアップを図ることも十分考えられる。