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チャイナ・スクランブル

中国、子供3人まで容認も人口増は期待薄−優遇措置ある一方、「躺平族」の白けムードも(中)
2021-06-15. 日暮高則
<街のスローガンと人民の戸惑い>
親子2代、3代にわたり、計画生育やその時代ごとの変更について国から強い指示を受けてきた一般大衆には、戸惑いや反発があるのは間違いない。かつて一人っ子政策展開中の時代、「一対夫婦只生一個孩子好!(一組の夫婦はただ一人の子供で良い)」「抑制人口数量、提高人口素質(人口を抑え、人々の素質を高めよう)」「計生工作天天抓、月月抓、年年抓、常抓不懈(計画生育は毎日、毎月、毎年しっかりと行い、常に怠ってはならない)」「厳禁生育超計画的二胎、多胎(計画生育を超えた第2子、それ以上の出産は厳禁)」などのスローガンが街中に横断幕で掲げられたり、農山村の家や役場の壁などに大きく書かれたりしていた。

これらの標語はまだおとなしい方で、「超生罰款你不缴、拘留所里見分暁(計画外出産は罰金、納めなければ拘留所行き)」「挙報計画外懐孕、生育行為的給予重奨(計画外の出産、生育を通報すれば賞金を出す)」と脅しや通報を奨励する高圧的なもの、さらには、「新婚夫婦入洞房、計画生育不能忘(新婚夫婦は寝室に入っても、計画生育を忘れるな)」ともっと露骨に夫婦の夜の生活に言及するものまであった。1990年代に入り、豊かさが美徳となり、誰もが金儲けを求めるようになると、今度は「貧困山区要致富、少生孩子多種樹(貧しい山村地区は豊かになる必要がある。それには出産を少なく、植樹を多く)」などと、富と少子を関連付けるような標語に変わっていった。

以上のような標語が36年間続いた。それが2016年、第2子まで認められるようになると、一転「農村要想富、多生孩子能種樹(農村は豊かになりたい。より多く子供を産めば、植樹ができる)」となった。さらに「二胎奨、一胎罰、丁克不育都該抓(2人の子供が奨励される。一人っ子は罰金だ。Dinks(共働き、子供を持たない夫婦)は法的な報復を受ける)」などと、今度は多胎しないと許されないような標語まで登場している。人民は政府の政策転換と、それを端的に伝える街のスローガンによって翻弄されてきたのである。

<人口政策転換への奨励と反発>
子供3人を持つとなれば、夫婦はこれまで以上の負担増を強いられるので、今の収入で家庭を支え切れるのかという新たな問題が出てくる。ネットサイトの中では「養老年金会計が厳しい状況にあり、将来きちんともらえるかどうかも分からない。そんな中で、一組の夫婦はそれぞれの両親4人と3人の子供と自分たちの計9人を養っていかなければならない。大変みじめな状態になるだろう」という嘆き節も聞かれる。新華社がネットで調査したところによれば、「第3子を今すぐにでも欲しい」「すでにスケジュールに入っている」「躊躇しながらも考えている」という人たちは2500人程度、それに対し「3人目の子供などまったく考えていない」という回答が2万8000人もあって、10倍以上の開きとなったという。

第3子出産を促すため、国有銀行が第3子養育向けに貸付最高限度額30万元のローンを開設するなど国全体として支援に乗り出した。4大銀行の一つ、中国銀行の江西省支店は「生育消費ローン」と銘打って大々的に宣伝を始めた。そこには「ローンで第3子?中国銀行はそれを支持します」とか「ローンで子供養育も夢ではない。第3子向けローン出現」などという誘い文句が書かれている。ローンの限度額は、一子目が10万元、2子目が20万元、3子目が30万元。20−50歳の既婚者を対象に、妊娠6カ月から子供が満2歳になるまで貸与する。金利は、ローン期間1年以内が4・85%、1年以上が5・4%。銀行関係者によれば、一般消費ローンに比べて金利は高くないが、それでも政府のお達しがあるためか、今後引き下げられる可能性もあるという。

一般企業も支援策を打ち出している。家畜用飼料の添加剤を研究開発している山東省の「青島必諾盈生物技術公司」は、女子従業員の第3胎が分かったら、妊娠期間中に毎月1000元の養育費を支給、出産時には生育奨励金として10万元の特別ボーナスと1年間の有給休暇を与えるとしている。さらに、子供が3歳になるまで、毎月1000元の「ミルク手当」を出し、双子であれば支給額は2倍にするという破格の優遇援護策をSNS上で発表した。企業側はイメージアップのため、今後こうした支援策を次々に打ち出してくるだろう。だが、一人っ子政策の厳しい時代を過ごしてきた女性たちは、政府や企業のこうした手のひら返しの待遇を冷ややかに見る。「かつて2人目妊娠で強制堕胎を求められたり、一人っ子違反で罰金を科せられたりしたのは何だったのか」「多胎の優遇策を打ち出す前に、かつて犠牲を強いられた女性への補償や、支払った罰金の返還が先ではないか」の声もあるという。