1. HOME
  2. 記事・コラム一覧
  3. コラム
  4. 第602回 若者の活躍と思わぬ情報を得たZoom講座 直井謙二

記事・コラム一覧

第602回 若者の活躍と思わぬ情報を得たZoom講座 直井謙二

第602回 若者の活躍と思わぬ情報を得たZoom講座 直井謙二

第602回 若者の活躍と思わぬ情報を得たZoom講座

昨年末、慶應義塾大学の学生が主体となって発表した「中東・アフリカ食糧危機オンライン勉強会」をZoom講座で視聴した。勉強会を支援したのは「JPFジャパン・プラットフォーム」というNPO法人だ。バンコク特派員時代の仲間で今はこのNPOの広報で活躍している友人の紹介で講座を知った。

世界で3億4,500万人が食糧危機にある中、特にアフリカのマダガスカルとソマリアの危機的な状況を支援する様子が紹介された。「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の加藤笙子氏のマダガスカル報告では干ばつに苦しむ村人や子供が写真と共に紹介された。洗濯や水浴びなど生活に必要な水はわずかに残る川の水が頼りだ。井戸からくみ上げたわずかな飲み水の運搬は女性や子供の仕事になっている。数多くの写真が干ばつの様子を写し出していたが、マダガスカルの人々の顔が純粋のネグリートではなくアジアの血が色濃く入っていることに気が付いた。

マダガスカルには多くの民族が渡来したが、インドネシアのスラウェシ島を中心に住み着いたブギス族も大航海以前からピニシと呼ばれる木造船でマダガスカル島に渡りインドネシアの文化も残っていることは小欄第12回「今も手作りピニシ船」で書いた(写真)。筆者はマダガスカルを訪ねたことはなく、Zoom講座で写し出された住民の顔から改めてインド洋を跨いだ交流を確認することができた。

もう一つはNPO法人「アクセプト・インターナショナル」の山崎琢磨氏のソマリアレポート。貧困と内戦に苦しんできたソマリアでは依然としてギャングと化した武装集団の襲撃に現地の人々が苦しんでいる。この法人はソマリアギャングの更生と社会復帰に取り組んでいて2018年にはギャング組織の解散にも成功した。貧困対策には治安の回復が欠かせないという。

この活動で思い出すのがアフガニスタンで活動したペシャワール会の故中村哲医師だ。旧ソビエトのアフガニスタン侵攻で隣国パキスタンのペシャワールに多数の難民が流出した。

90年代まで難民に対する医療活動を続けていた中村医師はアフガニスタンの貧困を救うには医療活動のみならず灌漑を始め農業振興が欠かせないと自ら献身的な活動をつづけた。貧困の根本原因に挑む山崎氏らの活動は中村医師の志を想起させる。

慶應義塾大学の現役学生もボランティア活動報告のZoom講座を視聴しているという。若者の素晴らしいボランティア活動の広がりとアジアとアフリカを結ぶ歴史的なつながりを確認する有意義な講座だった。


《アジアの今昔・未来 直井謙二》前回
《アジアの今昔・未来 直井謙二》次回
《アジアの今昔・未来 直井謙二》の記事一覧

タグ

全部見る